2017年11月29日水曜日

年収800万円サラリーマンは本当に「金持ち層」なのか

取りやすいところから取る

結局、取りやすいところに増税するという事なのだろうか。政府・与党が議論を進めている2018年度税制改正の所得税の見直しで、年収800万円台から900万円台以上の会社員が増税になりそうな気配だ。

自営業者やフリーランスなど全員が対象になる「基礎控除」を増やす一方で、会社員だけが対象になる「給与所得控除」を引き下げる検討が進んでいる。

働き方によって控除が異なり税額に差が付くのは不公平だという理屈は一見正しそうだが、どうやら本音は税金を「取りやすいところから取る」ための制度改正の様相が強まっている。

給与所得控除は、スーツや靴など会社員として働くために必要なものの購入代などを「必要経費」として認める仕組み。年収に応じて控除額が増えるが、現在は年収1000万円超で控除額が上限の220万円に達して頭打ちになる。

基礎控除を引き上げて、給与所得控除を引き下げることで、低所得者は減税になり、高所得者は増税になるとしているが、焦点は年収いくら以上で増税になるかという「分岐点」だった。

政府・与党は今回の見直しで、控除の上限額220万円を引き下げたうえで、さらに上限に達する年収の線引きも年収800万円台~900万円台に引き下げたい考え。つまり上限を超える800万円台~900万円台の会社員は増税になる可能性が高い。

サラリーマンへの不公平は変わらず

だが、実際に、基礎控除が増えたとして、自営業者やフリーランスで働く人の税負担が減り、会社員との間で「公平性」が増すのだろうか。

現実には、自営業者などは申告時に経費計上が認められており、一般的に言って会社員よりも幅広く控除が認められている。

最近では言われなくなったが、会社員・自営業者・農林漁業所得者の所得捕捉率を、「9・6・4(クロヨン)」「トーゴーサン(10・5・3)」と呼び、その格差が長年指摘されてきた。給与所得者は会社による源泉徴収が原則で、所得を隠しようがないため、所得捕捉率は9割あるいは10割なのに対して、自営業者は6割あるいは5割だとするものだった。

この状況は抜本的に代わったわけではない。それにもかかわらず、「給与所得控除」が縮小される方向になったことに、サラリーマンの間からは不満の声が上がっている。決して、自営業者よりも会社員が優遇されてきたわけではないからだ。

むしろ最近は、比較的高い給与所得を得ている人への課税強化が続いてきた。2011年度の税制改正では、それまで所得に応じて増加していた控除に上限が導入された。また、2013年度税制改正では所得税の最高税率が40%から45%に引き上げられ、個人住民税と単純合算した最高税率は50%から55%になった。

財務省や自民党税制調査会は、「カネ持ち」に課税強化する分には批判を浴びないと思っているのだろう。確かに世の中は格差に対する批判が根強くあり、高額所得者への増税に賛成する声も少なからずある。

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