2017年11月29日水曜日

<東レ子会社不正>経団連会長お膝元でも 意識の低さ露呈

 10月の神戸製鋼所に端を発した品質検査データの改ざんは、三菱マテリアルに続き、現職経団連会長をしている東レにも及んだ。日産自動車、SUBARU(スバル)の新車完成検査の不正も合わせ、一連の不祥事は不正への意識の低さを浮き彫りにする。

 「(神戸製鋼の問題や『東レも不正をしている』とのネット上の書き込みがなければ)公表する予定はなかった。顧客との取り決めだから必要ない」。東レの日覚昭広社長は28日の記者会見で、昨年7月に子会社の不正を把握後、1年以上も公表しなかった理由についてこう繰り返した。

 不正に及んだ企業は、安全性は十分との認識で長期間続けていた。神戸製鋼は10日公表した報告書で「いつしか不適切な行為が日常の業務の中に溶け込んだ」と分析。日産では弁護士の調査に「実質的に適正性は担保され、大きな問題ではないと考えた」と話す従業員がいた。三菱マテリアルの竹内章社長は24日の記者会見で、「顧客に説明した上で安全性が確認され解決済みだ」と述べ、仲間内の論理を盾に子会社の不正の詳細を明らかにしなかった。

 経団連会長を務める東レ相談役の榊原定征氏は27日の記者会見で、三菱マテリアル子会社が不正把握後も不適合品を約8カ月間出荷したことについて「発覚した時点で速やかに公表するのが原則」と述べた。東レが榊原氏に不正を報告したのはこの発言後という。榊原氏は「日本企業は危機意識を持って初心に帰り、国際的信頼を立て直す必要がある」と指摘したが、その言葉はそのまま出身母体東レに降りかかる。

 経団連会長はその時代の日本企業の顔でもある。現職の会長会社の不祥事は異例で、日本企業全体に与えるダメージは大きい。企業経営に詳しい米倉誠一郎・法政大学大学院教授は「一連の不祥事は日本のものづくりの競争力の源泉である高品質への信頼を傷つけ、自分で自分の首を絞めた」と批判する。【古屋敷尚子、川口雅浩】

 ◇合意があれば規格外も出荷 「トクサイ」不正の温床

 神戸製鋼所、三菱マテリアルに続き、東レでも発覚した不正の温床となったのは、取引先が求める規格から外れても合意があれば出荷できる「特採(トクサイ)」(特別採用の略)と呼ばれる素材業界の慣行だ。

 このトクサイの趣旨を逸脱し、取引先の合意なしに出荷したため問題が起きたもので、東レの日覚昭広社長は28日の記者会見で「顧客への説明なしにデータを改ざんしたのが最大の問題」と述べた。東レ子会社では最終チェック役の品質保証室長が改ざんしていた。

 規格外の素材は正規の規格品より安く取引されるため、トクサイの」慣行をもとに合意がなくても規格品として納入したいとの思惑もあったようだ。神戸製鋼は10日発表した報告書で「収益を求めるあまり、生産や納期を優先する風土が生まれ、顧客からクレームがない限り、検査や製品の強度などの仕様が軽視された」と分析した。

 測定した検査データを社員の手作業で入力していた点も、不正が発覚した素材3社に共通する。今回の不正を受け、東レはデータ入力を複数の責任者がチェックするほか、入力を自動化したり、データを修正したりする場合は履歴が残るシステムに今年9月から段階的に変更したという。神戸製鋼も、データ入力をコンピューターで自動化するシステムの導入を再発防止策の柱に掲げる。

 しかし、国内の素材メーカーでは商慣行としてトクサイが存在し、検査データ入力の自動化も進んでおらず、他メーカーでも不正が発覚する可能性は否定できない。東京大ものづくり経営研究センター長の藤本隆宏教授は「品質管理を巡る企業の逸脱行為は構造的な問題で、今後も他の会社で表面化する可能性がある。企業経営者は人ごとと思わず、自社で(不正が)発覚した場合にどう透明性をもって対処するか、あらかじめよく考えておくべきだ」と指摘する。【川口雅浩、安藤大介】

東レハイブリッドコードの製品検査データ改ざんについて謝罪する東レの日覚昭広社長(左)ら=東京都中央区で2017年11月28日午前10時31分、竹内紀臣撮影

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