[東京 29日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁は29日、都内で講演と質疑を行い、地域金融機関の統合再編に向けた動きが強まりつつある中で、銀行部門の競争政策について、効率性に加えてシステミックリスクの回避という安定性の視点が重要との見解を示した。
地域の人口減少など構造問題や長引く超低金利環境を背景に本業収益の減少が続く地域金融機関では、統合再編に向けた動きが強まりつつある一方、長崎県と新潟県では県内シェアの高まりを理由に公正取引委員会の審査が長引いており、県内地銀の統合が延期されている。
中曽副総裁は「統合再編に関する個別事例についてのコメントは差し控える」としながらも、銀行における競争政策は「効率性だけでなく、安定性も重要な視点だ。ここが一般の産業と違う」と指摘。資金決済にも使われる小口の預金を多数保有する銀行部門が破綻した場合は、「一般企業よりも社会的なコストが格段に大きくなる」と理由を説明した。
金融機関経営の不安定化よって金融システムの安定性が損なわれれば「地域経済はもとより、日本経済の持続的な成長も困難になる」と述べ、銀行部門の競争政策には「システミックリスクの回避という視点が不可欠」と主張した。
北海道拓殖銀行や山一証券など日本の大手金融機関が相次ぎ経営破綻した1997年11月から20年が経過したが、信用機構課長として最前線で危機対応に当たった当時を振り返り、「最も印象深く忘れられないのは、破綻した民間金融機関の職員の方々が働く姿」と語った。
預金者が窓口に殺到する混乱状態の中でも「統率を失わずに業務をしておられた。彼らを駆り立てていた原動力は何だったのか。やはり金融マン、金融ウーマンとしての意地や誇りを貫こうとしていたに違いない」と回想した。 (伊藤純夫)
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