[東京 29日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁は29日、都内での講演で、全国的な人口や企業数の減少が地域金融機関共通の収益の下押し要因になっているとし、競争激化を通して金融システムの安定性に大きな影響を与え得ると語った。
金融機関の供給能力が過剰な中で金融機関の統合再編は選択肢の1つとしたが、すべてではないとも指摘。過度な金利競争に走らない中長期な視点に立脚したビジネスモデルの構築が重要と訴えた。
中曽副総裁は日本の金融システムの現状について、金融機関が十分な資本を確保しており、「大規模なシステミックリスクに発展するような懸念はなく、安定性を維持している」と評価する一方、「将来にわたって金融システムの安定性を維持し続けることができるかどうか、その保証はない」と語った。
特に地域銀行では、株価の変動から推計した予想デフォルト確率やシステミックリスク指標が上昇しており、「株式市場は重要なシグナルを発している」と指摘。リーマンショックのような「急性ストレス」に対して、全国的な人口や企業数の継続的な減少を「慢性的な共通ストレス」と位置づけ、こうした状況がさらに長期化すれば多くの金融機関が「同時に(連鎖的に)自己資本を毀損(きそん)していく可能性も排除できない」と警鐘を鳴らした。
慢性ストレスが地域金融機関の収益の下押し要因となっている中で、「借り入れ需要が伸び悩むなか、貸出競争による資金利益の減少という共通エクスポージャーを抱え込むようになっている」とし、地域金融機関は互いに金利競争から抜け出しにくくなっている「囚人のジレンマ」に「すでに陥っているとみられる」との見解を示した。
こうした状況への対応として「金融機関の統合再編は選択肢の一つ」としたが、「すべてではない」とも強調。各金融機関が近視眼的な利益追求に走らず、「利益最大化の時間的視野を、より長期に据えてビジネスモデルの転換を図っていくことが重要だ」と強調するとともに、日銀として考査やモニタリングを「横断的かつ集合的に運用することで、経営判断、ビジネスモデルの構築を促していきたい」と語った。
また、中曽副総裁は、金利を下げ過ぎると金融仲介機能に悪影響を与え、かえって金融緩和効果が減衰するとしたリバーサル・レートの理論について「最適なイールドカーブ把握の参考になる理論」と評価し、適切なイールドカーブの形成において金融情勢も丁寧に点検していく考えを示した。
*内容とカテゴリーを追加しました。
伊藤純夫 竹本能文
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