2017年11月22日水曜日

スタートトゥデイ、「採寸スーツ」無料配布 PBで受注生産

 衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を手がけるスタートトゥデイは22日、プライベートブランド(PB)の戦略を発表した。採寸専用の服を無料配布し、一人ひとりに最適な洋服を生産する。「ネットで服は売れない」という定説を崩した同社が、過剰在庫に苦しむアパレル産業の常識を変えようとしている。

 PBのブランド名は「ZOZO(ゾゾ)」。同日、センサーを内蔵する「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」の無料配布の予約を日本を含む160カ国で始めた。PB商品を購入するには事前にこのスーツで採寸する必要がある。

 ゾゾスーツは昨年6月に出資したニュージーランドのスタートアップ企業の技術を活用する。体中に張り巡らされた生地の伸び具合をセンサーが検出し、1万5000カ所のサイズを瞬時に計測できるという。

 利用者はスマートフォンでサイズのデータを送り、ゾゾはそのデータに基づいてぴったりの服を生産する。前沢友作社長はツイッターで「人が服に合わせる時代から、服が人に合わせる時代へ」とコメントした。

 11月末にも販売を始めるPBで、どのような洋服を扱うかや価格帯は明らかにしていない。ただ22日に公開したのは白のワイシャツとパンツを着た女性の映像。ベーシックアイテムが主力と見られ、ファーストリテイリングの「ユニクロ」と競合する可能性が高い。

 消費者は自分の身体データにもとづいてゾゾに出店する他のアパレル企業からも最適なサイズの商品を購入できる。サイズが合わないという理由での返品を減らし、ゾゾに出店するアパレル企業の売り上げ増につながる可能性がある。

 衣類のネット購入を一般化させたスタートトゥデイの株式時価総額は約1兆円。三越伊勢丹ホールディングスの2倍以上だ。次に狙うのが生産革命で、「成功すれば世界中のアパレル企業を超える規模感のブランドになりうる」。前沢社長は10月30日の決算説明会でPB事業について自信をみせていた。

 商品を大量生産して店頭に並べるアパレル企業の手法は、過剰在庫の問題などで限界が近づきつつある。一人ひとりに最適なサイズの商品を生産できれば在庫リスクが減り、試着ができないネット販売と親和性が高い。ゾゾに出店する大手アパレル企業の経営者は「ネットで服を購入することのハードルを劇的に下げるのでは」と期待する。

 しかし22日のPB戦略の発表後、株価は一時5%下げた。デザインや生産管理などで新たに人員を抱えるなど経営効率が悪くなることへの懸念もある。

 独壇場だったネット販売でも包囲網が迫る。アマゾンジャパンは同社として世界最大級の専用スタジオを日本に設立する計画を打ち出すなど、ゾゾの牙城を崩そうとしている。消費者のサイズ情報を切り札にアマゾンとどう戦うのかが注目だ。(鈴木慶太)

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