2017年11月4日土曜日

米FRB議長パウエル氏 公職、民間経験を評価

パウエル氏=石川智規撮影

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 【ワシントン=石川智規】トランプ米大統領は二日、中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長にジェローム・パウエルFRB理事(64)を指名した。議会上院での承認を経て、イエレン現議長(71)の任期が切れる来年二月に就任する。

 ホワイトハウスで記者会見したトランプ氏は「ジェイ(パウエル氏の愛称)は、公職とビジネス界での経験を持つ」と強調。「傑出した経験と現実的な視点で経済に何が必要かを理解している」と述べ、自らと同様、民間でビジネスの経験がある点を起用した理由に挙げた。

 共和党員であるパウエル氏は、議会共和党の主流派からの信任も得られやすい。トランプ氏はイエレン氏の金融政策が株高と雇用増をもたらしたと評価しており、現職のFRB理事であるパウエル氏が、イエレン氏と同様の政策を継承し得る点も起用の決め手になったようだ。

 弁護士のパウエル氏はブッシュ(父)政権の財務次官を経て、ウォール街の投資ファンド共同経営者などを歴任。二〇一二年にFRB理事に就任し、イエレン議長の緩やかな利上げ路線を支持するなど穏健な金融政策で知られる。半面、経済学の学位を持たず、エコノミストの経験がないFRB議長の誕生は約四十年ぶり。パウエル氏は記者会見で「物価安定と雇用の最大化のためにあらゆる力を尽くす」と抱負を語った。

◆緩やかな利上げ 継続

 トランプ大統領がFRB次期議長にパウエル理事の内部昇格を決めたことで、米国の金融政策は緩やかに利上げを進める路線が続く見通しだ。半面、超低金利政策を進める日本との金利差が広がり、円安ドル高が進めば、日本に対し「円安を誘導している」との批判が向かう可能性もある。

 「金融政策の決定は米国の家計や地域に重要だと理解している」。パウエル氏は二日の記者会見で、FRBの政策決定に向けた価値基準をこう説いた。

 「地味な現実主義者」(米ブルームバーグ通信)と評されるパウエル氏は穏健な金融政策を志向し、現議長のイエレン氏の政策を支持する。このため、景気や物価情勢に応じて緩やかに利上げする方針は今後も維持される見通しだ。

 その場合、超低金利政策を進める日本との金利差は徐々に広がることになる。市場では、利回りが高くお金の運用に有利なドルを買って円を売る動きが進み、円安ドル高傾向が続く一因になる。輸出産業が主体の日本経済にとって悪い話ではない。

 だが円安が過度に進めば、パウエル氏は米国内の製造業の保護や輸出増を強く訴えるトランプ氏から、「ドル高是正」に向けた政策変更への圧力を受けかねない。銀行などへの金融規制の緩和を望むトランプ氏の意向に、パウエル氏が従わざるを得ない局面が訪れることも想定される。

 政策の予測が難しいトランプ氏から指名を受けたパウエル氏は、中央銀行に求められる政治からの独立性を保ち、雇用や物価の安定を守る宿命を背負う。次期議長のかじ取りは米国経済だけでなく、日本経済にも大きな影響を及ぼす。 (ワシントン・石川智規)

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