レンタカーの需要が大きく伸びています。外国人観光客の利用や、消費者の意識変化が後押ししているようですが、その利用実態とはどのようなものでしょうか。
台数は10年で1.7倍に
レンタカー市場が活況を呈しています。
信用調査会社の帝国データバンク(東京都港区)が全国273社の企業データから抽出・分析した調査によると、総収入は7年連続で前年度を上回り、2016年度は初めて1兆円を突破したといいます。特に、2015年度から2016年にかけては前年比9.6%と大きく伸び、過去10年間で最高を更新しています。
好調の背景を、帝国データバンクは外国人観光客需要の増加、低価格業者の台頭による市場刺激、消費者による乗用車の「保有からシェアへ」の意識変化などと分析しています。実際に業界としてはどのように認識しているのか、全国レンタカー協会(東京都千代田区)に聞きました。
——レンタカーの業績はやはり大きく伸びているのでしょうか?
はい。協会としては、それを登録台数の増加で認識しています。国土交通省に登録された2016年3月末時点のレンタカー台数は約62万台で、10年前と比較しても約1.7倍です。乗用車だけでなく、トラックの台数も震災需要などにより増加しており、62万台のうち25万台を占めます。
——乗用車では、どのような人が利用されるのでしょうか?
観光やビジネスの利用が主でしょう。鉄道の便が悪い沖縄、北海道などでは外国人観光客の需要が大きく伸びていますが、全体の主流を占めるのはもちろん日本人です。地方出張の足として利用され、その利便性に気づいたという声も聞かれます。
人気を下支えするものとは 「クルマ離れ」は当てはまらない?
——好調の要因はどのような点でしょうか?
利便性の高さを裏打ちする信頼性でしょう。それはすなわち、しっかり点検整備されたきれいなクルマ、そして手厚い保険を提供することです。近年は従来の補償に加え、事故時の不安をよりカバーするプランを設ける事業者も増えました。コストを抑えた格安の事業者も増加しましたが、それらは以前ほど伸びていない印象で、全体的にはより安全・安心を求める傾向が強まっていると考えます。
それはデータのうえでも裏付けられます。最近は外国人のお客様による事故の増加が取り沙汰されることがありますが、レンタカー全体の事故件数は、台数が増えているにも関わらず減少傾向にあるのです。
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国土交通省の資料によると、2016年までの10年間におけるレンタカーの年間死傷事故件数は、外国人によるものは2013年の24件から2016年には81件に増加しているものの、全体としては2013年に6534件だったものが、2016年には6150件と微減傾向にあります。全国レンタカー協会は、「お客様に安全なクルマを提供し、啓発に取り組んできた結果」と話します。
実際、近年は衝突被害軽減ブレーキなど先進安全機能を搭載したクルマも増えるなど、クルマ自体も変わってきています。「ニッポンレンタカー」を展開するニッポンレンタカーサービス(東京都千代田区)では、2017年1月以降に配備する新車はすべて、先進安全機能搭載車に限定しています。
「これまでも先進安全機能を搭載したクルマが多く入ってきており、この先は商用車やトラックでも標準になってくるでしょう。事故の発生を抑えられるだけでなく、万が一事故が起こった場合でも、その被害を大幅に軽減することができます。お客様を守り、そしてわたしたちにもメリットをもたらすと考えています」(ニッポンレンタカーサービス)
現在はまだ先進安全機能搭載車と非搭載車が混在していますが、「先進安全機能搭載車に乗られたお客様からは『次からはこれにしてほしい』と言われることもあります」といいます。1月から2年くらいかけ、順次置き換えを進めていくとのことです。
近年は若年層を中心とする「クルマ離れ」も聞かれます。しかし全国レンタカー協会は、「よく言われる『若者のクルマ離れ』はレンタカー業界からすれば当てはまりません」ときっぱり。「個人の収入が伸びないなか、スマートフォンなど別のものにお金をかけることもあり、無理してクルマを買うことがないのでしょう。しかし、『クルマに乗りたい』という思いは衰えていません」と話します。
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