金融緩和政策が一段と長期化する。日銀は31日の金融政策決定会合で、いまの低金利を維持することを決め、黒田東彦総裁は0%程度に誘導する長期金利の上限を0.2%程度まで容認する考えを表明した。前年比2%上昇の物価安定目標の達成が2021年度以降にずれこむ見通しとなり、低金利の副作用に配慮しながら緩和を続ける政策の枠組みに移行した。
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日銀は13年4月から強力な金融緩和を続けてきた。しかし目標とした2%の物価上昇は達成できず、足元の物価は伸びが鈍っている。日銀が31日に公表した20年度の物価見通しは1.6%の上昇。目標の達成まで、少なくともあと3年は強い緩和が続く。
「政策の持続性を高める」。31日の記者会見で、黒田総裁は政策の修正についてこう述べた。長期金利を0%程度に誘導する施策を導入したのは16年9月。約2年ぶりの政策修正となった31日、黒田総裁は2年前と同じ言葉を繰り返した。
金融緩和を長く続けるために、「累積的」にたまってきた副作用をどう扱うかが今回の決定会合の焦点だった。結論の一つが長期金利の誘導を微修正することだ。これまではマイナス0.1%~プラス0.1%程度になるよう国債購入を調節してきた。今後、「変動幅を倍くらい(0.2%程度)にする」(黒田総裁)とし、一定の幅で金利が動くことを認める。
マイナス金利政策による金融機関の負担も抑える。今は金融機関が日銀に預ける当座預金のうち約10兆円にマイナス0.1%の金利をかけている。これを5兆円程度に減らす。日銀は市場の短期金利に影響がない範囲で調整するため、緩和効果は低くならないという。
副作用に目配りしたものの、あくまで緩和の持続が前提だ。日銀は同時に、「フォワードガイダンス(将来の指針)」と呼ばれる新たな手法を導入した。
現状の金融緩和を「当分の間」続けると約束することで、日銀が引き締め方向の政策修正に動くとの観測を打ち消す狙いがある。長期金利の変動を容認することについて、黒田総裁は「金利の引き上げは全く意図していない」と強調した。
年6兆円買っている上場投資信託(ETF)は購入方法を見直す。6兆円のうち、TOPIX連動型を増やす。一部の銘柄で株価が振れやすいとの指摘に対応する。
金融市場では先週から、「日銀は長期金利の上昇を容認する」との観測があり、市場金利が上昇していた。日銀が今の金利を「当面の間、維持する」としたことで、政策発表後の長期金利は0.090%から一時0.045%へと下がった。
5年前、異次元の金融緩和は円安を呼び、日本経済に外需主導の景気回復をもたらした。しかし物価の伸びを欠くまま、緩和政策は2度にわたり修正を迫られた。金融緩和がもたらすデフレ脱却の道筋は、見えにくくなっている。
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