[ニューヨーク/ワシントン 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米電気自動車メーカー、テスラ(TSLA.O)の株主は間もなく、同社の本当の企業価値を知ることになるかもしれない。
米証券取引委員会(SEC)は27日、株式非公開化について「虚偽で誤解を招く」投稿を行ったとして同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)を提訴し、同氏の退陣を求めた。マスク氏不在のテスラは企業価値がしぼむだろうが、より理性的に評価されるようになると言えるかもしれない。
SECの訴状は、仮に多額の資金がかかっていなければ楽しめる内容だ。
例えば、マスク氏が株式非公開化計画の価格を1株420ドルに決めたのは、この数字が大麻吸引の隠語だからガールフレンドが「面白がるだろう」と考えたのも一つの理由だったようだ。マスク氏はその傲慢な態度があだになり、退陣に追い込まれる可能性が出てきた。テスラ株は27日の時間外取引で10%以上も下落した。
SECの行動の素早さが衝撃を大きくしている。通常は訴追まで少なくとも1年間を要することが多い。
時間外取引での下落後も、テスラ株は2020年の予想利益の31倍という飛び抜けた水準を保っている。生産目標の達成に度々失敗している自動車メーカーの株価としては割高で、その高さは投資家がマスク氏自身につけたプレミアムにほぼ帰せられる。マスク氏不在のテスラ株が2020年の予想利益の11倍程度に落ち着くと想定しよう。これでもBMWの株価収益率(PER)より50%高いが、時価総額は140億ドル程度と、27日終値時点の4分の1にしぼむ。
この価格なら、テスラは買収の魅力的な標的になる可能性さえ出てくる。しかし、まずは資金繰りの危機を切り抜ける必要がある。同社はキャッシュを食いつぶしており、来年3月までに償還を迎える債務は12億ドルに上る。SECがマスク氏にこぶしを振り上げたのは劇的な出来事だが、テスラが今とは全く違う道を歩まざるを得なくるかもしれない要因は、ほかにも潜んでいる。
●背景となるニュース
・SECは27日、テスラのイーロン・マスクCEOに対して民事訴訟を起こした。株式の非公開化をほぼ確実に行うことができるとする「虚偽で誤解を招く」コメントを8月7日、ツイッターに投稿したため。
・マスク氏の投稿は「テスラを420ドルで非公開化することを検討している。資金は確保済み」というものだった。
・SECはマスク氏に対し、ツイッター投稿による市場の混乱で得た利益の返還と民事制裁金の支払いを求めている。マスク氏が公開企業の幹部や取締役に就くのを禁じることも要請している。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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