東京都が展開している時差通勤キャンペーン「時差Biz」が再び始まりました。時差通勤すると比較的楽に通勤できるなどのメリットがありますが、なかなか定着しません。それはなぜなのでしょうか。
ラッシュのピークを避けて臨時列車を運転
目標は「満員電車ゼロ」。東京都や関東の鉄道事業者などは2018年7月9日(月)、客をピーク時間外の列車に誘導することで混雑を緩和する「時差通勤」の促進キャンペーン「時差Biz」を始めました。2017年の夏に続き2度目で、2018年は7月9日(月)から8月10日(金)までの約1か月間、行われます。
東急電鉄では7月9~20日の平日9日間、田園都市線と東横線で「時差Biz」に連動した臨時列車の運転を計画しました。田園都市線の臨時列車「時差Bizライナー」は2017年に続いての運行ですが、東横線の「時差Biz特急」は今回初めての運行になります。
両列車ともラッシュが始まる前の早朝に運転し、キャンペーン参加者に比較的すいているラッシュ前の列車を体験してもらうというもの。これにより時差通勤を促し、ピーク時の混雑を緩和しようという狙いがあります。
田園都市線の場合、朝ラッシュのピークは7時50分~8時50分の池尻大橋→渋谷間で迎えますから、上り始発駅の中央林間駅(神奈川県大和市)では6時50分~7時50分ごろがピークになります。これに対して「時差Bizライナー」は、ピーク時間帯に入る約50分前の6時1分に中央林間駅を発車。長津田、あざみ野、溝の口の3駅のみ停車して渋谷駅には6時43分に到着します。所要時間は約40分で、ピーク時間帯に中央林間→渋谷間を直通する定期列車に比べ10~30分短いのも大きなメリットです。
実際に運行初日の7月9日早朝、中央林間駅で「時差Bizライナー」が出発するところを見てみました。5時59分に列車がホームに入ると、ホームに並んでいた客が続々と車内へと入っていきましたが、それでも席が5~6割埋まる程度。立客がほとんどいないまま発車しました。
臨時列車の運転で混雑は減ったのか?
続いてピーク時間帯の久喜行き準急(6時57分発)に乗ってみましたが、中央林間駅を出発した時点でほぼ満席。三軒茶屋駅に到着する直前には、ぎゅうぎゅう詰めに近いほどの混雑になっていました。
東急電鉄によりますと、2017年の「時差Biz」期間中に運行した「時差Bizライナー」は1日あたり約1500人が利用し、渋谷駅の到着時点の乗車率は100%だったといいます。東急鉄道CS課の内田智也課長は「前後の列車はだいたい90%ですので、通常の列車よりは高い乗車率でした。短期間で周知したなかでは多くの方に利用いただいたと思います」と話しました。
ちなみに、田園都市線の混雑率は2016年度が184%でした。内田課長は「『時差Bizライナー』単体でピーク時の混雑率がどう変わったかは調べられていません」としつつ、「ラッシュ時に田園都市線の定期券で並行する路線バスも利用できるサービスを導入したり、ピーク時を避けて列車を利用した客にクーポン券をプレゼントするなどの施策を総合的に行った結果、混雑率が3%程度下がりました」との見方を示しました。
大都市を通る鉄道路線では、企業や官公庁などの始業時間が集中する7時台から9時台まで、郊外から都心に向かう列車が通勤客で混雑します。東京圏の場合、主要路線の平均混雑率は1975(昭和50)年度で221%。1960年代には定員の3倍以上乗せて走る通勤電車も珍しくありませんでした。
その後、新線の建設や改良(複々線化など)が進んだことで混雑率は徐々に下がり、2000(平成12)年度には180%を割り込んで175%になりました。しかし、それ以降は混雑率の改善が進まず、近年は165%前後で横ばいの状態が続いています。
混雑率が下がらなくなった根本的な理由
これは鉄道の整備費用を補助する国や自治体の財政が厳しくなったことや、人口密集地域では建設用地の確保が難しく、新線の建設や複々線化に時間がかかるようになったことが背景にあります。また、沿線の人口が昔に比べて増えなくなり、この状態で新線の建設や複々線化を行っても鉄道会社の収入はあまり増えません。こうしたことも、抜本的な改善が進まない理由のひとつになっているといえます。
ただ、ピーク時の混雑が激しいということは、逆にいえばピーク以外の時間帯はすいていて、余裕があるということになります。そこで考えられるようになったのが、時差通勤の促進です。
列車がすいている時間帯に客が移ってくれれば、新線建設や複々線化のような膨大な費用をかけることなく、ピーク時の混雑を減らすことができます。客にとっても、ピークを避けることで着席通勤できる可能性が高まり、ぎゅうぎゅう詰めの圧迫感から解放されるというメリットがあるのです。
しかし、時差通勤の促進による混雑緩和の考え自体は古くからあるものの、なかなか定着しません。鉄道事業者がいくら時差通勤を促しても、通勤先の企業や官公庁などの始業時間が同じ時間帯に集中している限り、実際に通勤する時間帯も大きくは変えることができません。本格的に定着させようとしたら、鉄道事業者だけでなく通勤先の企業や官公庁の協力も不可欠です。
東京都の「時差Biz」の場合、鉄道事業者だけでなく通勤先となる企業約700社が参加。時差出勤や朝型出勤、フレックスタイム制、テレワークを導入するなどして、ピークの時間帯を避けて出社できるようにすることを目指しています。通勤先の企業などと一体となった取り組みが時差通勤の定着につながるかどうか、今後の動向が気になるところです。
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