2018年7月12日木曜日

複数社打診、日本市場見直し 西友売却検討

倉庫のような広い店内に商品が並ぶ米スーパー・ウォルマートの店舗=米ウィスコンシン州デラバンで2018年6月9日、今村茜撮影

 小売り世界最大手の米ウォルマートが、傘下の国内スーパー大手、西友の売却を検討していることが12日、明らかになった。関係者によると、複数の流通大手や大手商社などに売却の打診を始めたという。売却額は3000億円以上となる模様。インターネット通販との競争激化を背景にウォルマートは世界的に既存事業の見直しを進めており、人口減少などで日本市場の拡大は難しいと判断したとみられる。

 世界の流通業界では、米アマゾン・コムなどネット通販企業の急拡大で、既存の小売業が対応を迫られている。「世界の小売業ランキング2018」(デロイトトーマツ調べ)では、ウォルマートは首位を維持しているが、米アマゾンは6位と追い上げる。ネット通販は、従来は苦手とされてきた食品分野でも拡大。米国の食品流通業団体「食品マーケティング協会(FMI)」などの調査によると、米国では2024年までに7割の消費者がネット通販で食品を購入するようになるという。

 ウォルマートは16年、米ネット通販企業ジェット・ドット・コムを30億ドル(約3300億円)で買収するなどネット事業をテコ入れするとともに、世界戦略では需要増が見込める市場に集中投資している。今年5月には、インドのネット通販大手フリップカート株の77%を160億ドル(約1.7兆円)で取得すると発表。一方、今年6月にはブラジル事業の80%を米投資ファンドに売却するなど、採算性の悪い市場からの撤退も進めている。

 日本には02年に進出したが、コンビニエンスストア、ドラッグストア、ネット通販などとの競合が激化。スーパー業界は、人口減や消費者の強まる節約志向で00年代から売上高が横ばいとなっている。また、消費者の要求水準も高く、日本チェーンストア協会の井上淳専務理事は「日本はスーパーの企業数も店舗数も多く競争が激しい。食の好みも各地方で異なり全国一律の商売が難しく、海外よりもきめ細かな運営が必要だ」と話す。

 西友は今年1月から5店舗を相次いで閉鎖しており、業界関係者によると「年明けから売却検討が始まったようだ」という。ただ、「スーパー事業は大手流通でも採算が厳しく(西友の)売却先を見つけるのは至難の業」(流通大手幹部)との見方もある。ウォルマートは今年1月に楽天との提携を発表。西友の店舗網を利用したネットスーパー事業を今夏にも開始予定だが、売却の検討に入ったことで、事業提携の先行きも見通せない。【今村茜、藤渕志保】

 【キーワード】西友

 日本全国で335店舗(5月16日現在)を展開する大手スーパーマーケット。親会社ウォルマートが掲げる「Every Day Low Price(毎日低価格)」に基づく低価格路線を貫く。

 西武ストアが母体で、西武百貨店を中心とするセゾングループの中核だったが、バブル期にノンバンク子会社の不動産過剰投資で巨額の不良債権を抱え、財務体質が悪化。2000年から出資を受け入れた住友商事の仲介で、02年にウォルマートと業務提携し、08年にはウォルマートの完全子会社となった。

 今年2月に、ウォルマート出身のミッチェル・スレープ氏が最高経営責任者(CEO)代行に就任。従業員数は2万3576人(1月現在)。

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