分裂騒動に揺れる仮想通貨ビットコインを巡り、決済手段として利用しているリアルな企業・店舗の対応が割れている。家電量販のビックカメラは25日、現在30店舗で取り扱っているビットコイン決済を26日からグループ59の全店舗に拡大すると発表。一方、メガネ専門店のメガネスーパーは25日、ビットコイン決済を休止した。楽観と静観が入り乱れるが、実際の商品・サービスの取引現場に混乱がない点は双方に共通だ。
国内の仮想通貨取引所は23日に停止していたビットコインの入出金と決済を24日に再開した。決済スピードを高める新たな仕組みが導入され、ビットコインの分裂がひとまず起きないと判断したためだが、新仕様への対応を関係者が決める8月1日に向けて分裂騒動が再燃する恐れがある。
ただ、ビットコイン決済を導入済みの小売企業・飲食店舗などは冷静。クレジットカードに加え、「Suica(スイカ)」や「楽天Edy」など数多くの電子マネーが流通し、決済機能そのものが失われる事態は起こらないためだ。反応が分かれるのは、世界で流通する仮想通貨の集客効果への期待感だ。
ビックカメラの広報担当者は「ビットコイン決済の拡大は、お客様の利便性の向上につながる」と話す。取引所国内最大手のビットフライヤー(東京・港)と組み、4月に有楽町店(東京・千代田)とビックロビックカメラ新宿東口店(東京・新宿)で試験的にビットコインを支払いに使えるようにしたところ、予想以上に顧客の反応が良好。外国人観光客の利用が多いと見込んでいたが、日本人の利用も非常に多くなっており、段階的に利用できる店舗の数を増やしたという。
自動車販売を手掛けるアイズブレイン(広島県廿日市市)は4月にビットコイン決済を導入し、1000万円を超える高級車の販売から車検・修理代金の支払いまで、これまでに十数件の利用があった。県外からの集客にもつながり「目に見えて売上高が増えている」(猪俣慶典社長)。分裂騒動を受けて、1週間ほどビットコイン決済を止めていたが、24日に再開。使えるうちは利用を継続する方針だという。
一方で、利便性よりも「使おうと思ったら使えない」といった顧客に不快感を与える事態を警戒する企業・店舗も。集客効果が今のところ限られているため、是々非々で対応するケースが多いようだ。
ビットフライヤーのサービスを利用する中国料理店「聘珍楼」は「サービス停止に準じてビットコイン決済を一時休止する」という。今年3月から導入しているが、これまで月に数件の利用がある程度で、担当者は「(騒動が大きくなっても)クレジットカードが使えなくなるといったレベルの大きな影響にはならないだろう」とみている。
今年1月からビットコイン決済を始めた不動産賃貸のべべライズ(東京・港)の担当者は「もともと利用件数が少ないため混乱はない」と語る。日本人の利用は皆無で、外国人が月に数件、賃貸契約の初期費用の支払いでビットコインを利用する程度だという。顧客の要望がある限り決済を継続するが、「値動きが激しいなど不安な要素はある。慎重に状況を見ていきたい」としている。
2015年春にビットコインでの決済を始めた焼肉店「赤身専門にくがとう」(東京・中央)は、「取引停止中はビットコインでの決済を断る予定だったが、利用を申し出るお客さんがいなかったので、特に影響はなかった」という。同店では週1~2組の客がビットコインで決済する。ビットコイン決済は手数料が安く、仮に取引が停止されても現金やクレジットカードで代替できるので今後も続けるという。
「Bitcoin決済OK!」。ホームページでビットコインが使えることをアピールする宮城県気仙沼市の「民宿はまなす」は、「手数料が安い」との理由で、1月からビットコイン決済を始めた。ビットコイン利用者には夕食時にワンドリンクサービスを実施している。まだ、利用件数は1件だが、今後もビットコイン決済を続ける予定だ。
今のところ大きな混乱が起きていないビットコイン騒動。ただ、リアルな現場は冷めた目で見ており、今後の一般消費者への浸透スピードを左右する事態であることは間違いなさそうだ。
(福岡幸太郎、栗原健太、潟山美穂、石塚史人)
Read Again http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25HLZ_V20C17A7000000/
0 件のコメント:
コメントを投稿