2018年2月28日水曜日

仮想通貨 投機に歯止めが必要だ

 円などの法定通貨とは異なり、お札や硬貨は存在せず、中央銀行という発行元もない。

 これを果たして「通貨」と呼べるのだろうか。交換業者コインチェックから580億円分が流出した仮想通貨のことだ。

 いわば値段の付いた電子データにすぎない仮想通貨は、国境を越えた送金・決済が便利に行える特性から利用が広がってきた。

 だが今や、値上がり期待で売買され乱高下する投機の対象に変質している。資金洗浄などの不正に使われることも少なくない。

 見過ごせないのが、業界の育成を優先し規制を後回しにした金融庁の責任だ。コインチェックのような業者の営業を許し、結果として相次ぐ不祥事を招いた。

 金融庁は事態を重く受け止め、仮想通貨取引の無秩序な肥大に歯止めをかける必要がある。

 国は昨年4月、仮想通貨を「支払い手段」と位置付ける改正資金決済法を施行した。同法により業者は登録制となり、顧客の財産の分別管理などが義務づけられた。

 所管する金融庁は世界に先駆けた法整備だったと説明するが、仮想通貨に拙速に「お墨付き」を与えたとのそしりはまぬかれまい。

 最大の失策は、登録申請中の交換業者に特例で営業を認める「みなし業者」制度の導入である。

 コインチェックなど安全管理に問題を抱える業者でも営業できるこの制度は改めねばならない。

 また、少ない元手で巨額の仮想通貨を売買できる証拠金取引は、利益も損失も膨らみ投機性が極めて高い。相場の意図的な操作の禁止と併せて規制が急がれる。

 海外では仮想通貨への警戒感が強まり、規制の動きが広がる。価格乱高下による金融システムへの悪影響を懸念してのことだ。

 仮想通貨の取引に国境はない。規制の見直しや運用には、当局同士の国際的な連携が不可欠だ。

 急騰・暴落する仮想通貨は、貨幣の機能の一つ「価値の保存」を果たせず、通貨とは言えない―。

 こう考える専門家は多く、むしろ株などに近い存在だと指摘する意見もある。利用者は取引にリスクが伴うことを認識してほしい。

 仮想通貨は社会に何をもたらすのか。社会はどう向き合ったらよいのか。あるべき姿について官民で議論を深めたい。

 大手銀行が価格変動のないデジタル通貨を開発する動きも出てきた。送金や決済の利便性を保ちつつ、仮想通貨を投機から切り離す試みとして注目に値する。

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