2018年2月27日火曜日

トヨタ、発進用ギヤ世界初採用のCVTなどTNGA技術で開発された新型パワートレーン技術説明会

発進用ギヤを世界初採用した「Direct Shift-CVT」

 トヨタ自動車は2月26日、2021年までに19機種37バリエーションの展開を予定する「TNGA(Toyota New Global Architecture)で一新した新開発パワートレーン」のうち、CVT、6速MT、2.0リッター直噴エンジン、2.0リッターTHS IIと、新たに3機種8バリエーションを今後展開していくことが明らかにされた4WDシステムについて新技術を発表。同日に東京本社で説明会を実施した。

 説明会ではトヨタ自動車 パワートレーンカンパニー パワートレーン製品企画部 チーフエンジニアの山形光正氏がプレゼンテーションを実施。新技術についての解説に先立ち、2017年1月からスタートしたパワートレーンカンパニーにおけるチーフエンジニア制度について紹介した。

トヨタ自動車株式会社 パワートレーンカンパニー パワートレーン製品企画部 チーフエンジニア 山形光正氏
2017年1月からパワートレーンカンパニーでもチーフエンジニア制度を導入

 これまでトヨタでは、車両開発でリーダーシップを発揮するチーフエンジニアというポジションを用意しており、一方でパワートレーンでは、エンジンやトランスミッションといったユニット単位のリーダーが開発を主導してきた。しかし、変化が激しくなってきているパワーユニット開発にはユニット単位での対応では不十分であるとの考えから、パワートレーンカンパニーでもチーフエンジニア制度を設けることになったという。

 これにより、開発段階の初期からエンジン、トランスミッション、ドライブラインまでバランスよくトータルで作り上げて商品力の強化を図ることが可能になり、商品を販売する世界各地域の規制動向、商品ニーズの変化などに迅速に対応できるようになると山形氏は語る。

 また、これまでにも紹介されてきた、2050年までに2010年比で新車によるCO2排出量を90%削減し、グローバル工場CO2排出ゼロなどを目指す「トヨタ環境チャレンジ2050」の取り組みについて改めて説明。トヨタでは2030年に新車販売の10%をEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)にするほか、EVやFCVに加えてハイブリッドカー、PHV(プラグインハイブリッドカー)など、モーターとバッテリーを搭載する「電動車」で全体の50%を占める計画を進めているが、山形氏は「一方では、2030年になっても90%の車両に内燃機関が搭載されることを意味します」と解説。エンジンやトランスミッションを進化させ続けていくこともCO2排出量の削減に大きく資すると語った。

 トヨタの基本スタンスとしては、「省エネルギー」「燃料多様化への対応」「エコカーは普及してこそ環境に貢献する」という3つの要素と同時に、「クルマの楽しさを追求する」ことを両立させることが重要だと考えているとしたほか、生産効率の向上によってユーザーニーズの多様化に対応し、世界各地のユーザーにすばやく商品提供することも目指してると山形氏は説明。このために加工や組み付けの基準を統一して異なる機種を高速でフレキシブルに生産できるラインを開発し、世界各地の生産ラインで仕様を統一してグローバル展開の迅速化を推し進めているという。

 このほかにも開発効率を高めるため、従来はクルマごとのニーズや特性に合わせて選択してきたパワートレーンのデバイスや構造を、TNGAでの開発ではプラットフォームとパワートレーンの刷新を同期。エンジンの燃焼室やシリンダーの設計を統一して、気筒容積と気筒数の組み合わせでエンジンバリエーションを構成するモジュール化を採用。これによってエンジンの開発種類数が約40%削減となり、開発の効率化、生産性能の向上が実現されていると山形氏は明らかにした。

 この結果として、2017年から2021年までの5年という期間に、パワートレーンで19機種37バリエーションを一気に導入。すでに複数の新規パワートレーンが市販化されているとした。

4WDの新統合制御「AIM(AWD Integrated Management:エイム)」

 最後に紹介された新しい4WDシステムは、前出のように今後3機種8バリエーションを展開していくことを明言。山形氏は近年のSUV人気によって4WDの市場は今後もさらに拡大する傾向にあると語り、「トヨタの4WD車は長い歴史の中で最も多くのお客さまにご愛用されております」と強調。今後トヨタはオンロードにおける旋回性能、オフロードでの悪路走破性能を高め、4WDシステムの損失低減にも取り組んでいくとコメントした。

 新たに紹介された新型4WDシステムは、コンベンショナルなガソリンエンジン車向けの「Dynamic Torque Vectoring AWD」と、ハイブリッドモデル向けの新型「E-Four」の2種類。Dynamic Torque Vectoring AWDでは高い燃費性能と優れた走破性の両立をテーマに、走行状況に応じて後輪のトルク配分を左右独立制御する「トルクベクタリング機構」、前後輪の車輪軸に「ラチェット式ドグクラッチ」を世界初採用し、2WD走行時に後輪に動力を伝達させる駆動系の回転を停止させて損失を80%に低減して燃費を高める「ディスコネクト機構」を搭載。さらに4WDによる走行性を引き上げるため、4WDとエンジン、トランスミッション、ブレーキを組み合わせて制御する新統合制御「AIM(AWD Integrated Management:エイム)」を採用。オフロード、オンロードの両方で優れた操縦安定性を発揮するという。

 また、新型E-Fourではモーター駆動となる後輪のトルクを1.3倍に拡大。より広範囲に前後の駆動力配分がコントロール可能になり、Dynamic Torque Vectoring AWDと同じくAIMによる制御を加えることで、高い走破性と操縦安定性を実現する。

 今後、TNGAによる新しい4WDシステムは、2023年までに4WD車全体の約70%、28車種に拡大する計画になっている。

 プレゼンテーションの最後に山形氏は「我々は今、新世代のパワートレーンを開発しています。それは次のステップである『トヨタ環境チャレンジ2050』を達成するためであり、それぞれに地域のさまざまなニーズに迅速にお応えするためであります。そしてそれらは全て、お客さまの笑顔のためです。今後も環境への貢献とクルマの楽しさの追求を高い次元で両立していきます」とコメントして締めくくった。

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Read Again https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1108535.html

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