社説/黒田日銀総裁再任へ−早期のデフレ脱却に智恵を絞れ
日銀の黒田東彦総裁の再任が衆参両院で近く合意に達し、57年ぶりの日銀総裁続投が決定する。目標達成が道半ばとなっている消費者物価上昇率2%の実現が継続課題となるが、現在の金融政策には副作用も目立つことから、緩和策の見直しなどが必要だろう。
今回の総裁選びは、候補者の選択肢が限られる中で、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の象徴的存在である黒田氏を交代させると、為替市場や株式市場が変調をきたしかねないため、「現状維持」という最も無難な結果に落ち着いた。
黒田氏は2013年3月に第31代日銀総裁に就任。直後の同年4月には「2年程度をめどに2%の消費者物価上昇率を達成する」を目標に掲げ“異次元緩和”と呼ばれる大規模な金融緩和策を開始。急速な円安・株高を実現させた。このため「世の中の雰囲気を明るくした」「デフレ脱却の道筋を作った」として、政府内の評価は高い。
16年2月にはマイナス金利、同年9月には長期金利を0%に誘導する長短金利操作を導入し、超低金利で景気を下支えしてきた。世界経済の持ち直しもあって日本の景気拡大が続く一方、物価上昇率は14年春の1・5%をピークに失速。黒田氏は目標達成時期の予想を6度にわたって先送りしてきた。
長期金利を0%程度に抑える政策は粘り強く物価目標を達成することを狙ったものだ。だが超低金利政策により金融機関の収益が圧迫され、貸し出しが減る副作用が大きくなってきた。この先も物価が十分に上がらないうちに利上げを行うと、円高を誘って景気を冷え込ませることが予想されるため、慎重な出口戦略が求められる。
金融機関に運用難を強いる超低金利や、日銀が国債発行残高の約4割を買い占めたことによる財政規律の緩みなど、副作用への懸念は強まるばかり。欧米の中央銀行が緩和政策を打ち切り、超低金利政策の出口戦略を進めるなか、続投する黒田総裁が早期のデフレ脱却を果たせるかどうかがあらためて問われることになる。
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