2018年7月13日金曜日

不要な手数料、実態ない融資 東日本銀に広がった不正

 金融庁が不適切な融資が横行していた東日本銀行に業務改善命令を出した。同行は自らの収益を増やすために顧客に負担を強いるという「顧客本位」と正反対の運営をしていた。収益環境の悪化と企業統治(ガバナンス)の欠如が不適切な融資の温床になった構図で、他の金融機関にとっても人ごとではない。

記者会見で謝罪する東日本銀行の酒井常務取締役(手前)とコンコルディアFGの神沢常務執行役員(13日午後、日銀本店)

記者会見で謝罪する東日本銀行の酒井常務取締役(手前)とコンコルディアFGの神沢常務執行役員(13日午後、日銀本店)

 東日本銀によると全83店舗のうち69店で根拠が不明確な融資実行手数料を受け取っていた。顧客への説明がなかったり、目的が分からなかったりしたものが、計997件で4億6000万円に達する。融資の一部を定期預金させる不適切な融資も50店であり、358件の計39億円が不必要な融資にあたる。

 手数料を取っていた先には、低利で借りやすくするために地方自治体などが利子補給している中小零細企業が多数、含まれているという。自治体との協定で手数料の徴収が禁じられている制度融資を使った融資先からも取っていた。

 また特定の副支店長(懲戒解雇済み)が営業成績を上げるために、融資先企業に対して担当地区内に実態のない営業所を登記させて融資を実行。多額の損失が出ているという。同様の事例が複数の支店で起きており、支店長自ら不適切な融資を実行したケースもあった。

 不正をチェックするための監査部も、形式的な点検や手続き面の監査に終始し、こうした不適切な融資を見過ごしていた。金融庁は顧客に負担を強いる不適切な融資が広範囲に及ぶことから「現場の暴走」ではなく、企業統治に重大な不備があるとみている。改善命令では、不正を監視し合って防ぐ機能の確立とともに、経営責任を明確にするよう求めた。

東京・日本橋の東日本銀行本店

東京・日本橋の東日本銀行本店

 13日に都内で記者会見した東日本銀の酒井隆常務は、営業に偏った人員配置が内部管理体制の甘さを生んだと説明し、「経営陣の責任はあるものと考えている」と明言した。具体的な経営責任は8月13日までに提出する改善計画で明らかにするとした。6月に頭取から代表権のない非執行の会長に退いた石井道遠氏ら経営陣の責任が焦点になる。

 超低金利環境の長期化で、預金を貸し出しにまわすことで得られる利ざや収入は減り続けている。東日本銀も本業のもうけを示す業務純益が2012年3月期は159億円だったが、18年3月期には88億円と4割以上も減った。苦境に加え、横浜銀との経営統合が不適切融資の背景にあると金融庁はみている。

 地銀最大手の横浜銀と東日本銀では規模も収益力も圧倒的な差がある。少しでもグループ内で存在感を高めるために、営業現場に過度なプレッシャーがかかっていたとみられる。

 18年3月期の上場地銀80行・グループは6割が最終減益で、うち6行は本業が赤字だった。収益環境の厳しさと不適切な融資は直結しない。ただ東日本銀への処分とは別に金融庁が13日公表した21の地銀に対する検査結果では、実現不可能な業績目標を掲げている事例が複数みつかった。

 金融庁によると「収益の必達目標から逆算して各営業店に数字を割り振る」ケースが多いという。厳しい環境下での高すぎる目標(ノルマ)は「一線」を越える危うさと背中合わせだ。金融機関には企業統治の徹底が改めて求められる。

 13日の東京株式市場でコンコルディアFGの株価は急落した。終値は前日比47円(8.5%)安の504円で年初来安値を更新した。傘下の東日本銀への行政処分報道を嫌気した売りが殺到した。

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