シェアハウスをめぐる不正融資問題で、スルガ銀行の第三者委員会(委員長・中村直人弁護士)は7日、融資の審査書類などに多くの改ざんや偽造があったと認定するとともに、その背景にコンプライアンス意識の欠如などがあったとする調査結果を公表した。これを受けて同行は、7日付で岡野光喜会長、米山明広社長、白井稔彦専務ら役員5人が辞任、後任社長に有国三知男取締役(52)を充てたと発表した。
創業家出身の岡野会長ほか代表権を持つ3人が引責辞任する異例の事態となったが、第三者委は辞任した3人については善管注意義務違反を認定するとともに、一部については法令違反もあったとした。岡野会長については「最も重い経営責任がある」と記した。会長ポストは後任がなく空席となった。
このほか第三者委は以下の点についても指摘した。
- 審査部門が営業部門からプレッシャーを受けていた傾向があった
- 極端なコンプライアンス欠如と企業風土の著しい劣化があった
- 有国氏に明らかな善管注意義務違反があったとは認められないが、一定の経営責任
スルガ銀は低収益にあえぐ地銀の中にあって、高リスクながら金利が稼げる個人向け無担保ローンや不動産投資ローンに注力することで高い収益性を維持、2016年度まで5期連続最高益を更新していた。しかし、1月にシェアハウス向け融資問題が表面化して以降、不適切融資などをめぐる報道が相次ぎ、株価は年初来で76%下落した。社内調査では増収増益維持に向けた圧力が不適切融資に走らせたとの指摘もあった。
パワハラ
スルガ銀本店がある静岡県沼津市で会見した中村委員長は、不適切融資について件数、金額ベースでは推計できないとしながらも、「本件は組織的問題だと認識している」との見方を示した。また目標達成に向けたパワハラが大きな問題だと指摘、「数字ができないならビルから飛び降りろと言われた」といった事例が報告書に盛り込まれた。同委は中村氏、仁科秀隆氏ら4人の弁護士がメンバーで、中立・公正な立場からシェアハウス問題の事実究明をすることを目的に5月に設置された。
スルガ銀行に対しては金融庁も4月から立ち入り検査を実施、融資審査に問題がなかったかなどを調べている。第三者委の調査結果も踏まえて、金融庁は行政処分に向けた最終判断をするとみられる。
同行の3月末の総融資額は約3兆2500億円で、うち、シェアハウス案件は約7%の2036億円としていた。その後、シェアハウスに加えそれ以外の投資用不動産融資が回収できないリスクも保守的に見積もるなどした結果、貸倒引当金は増え続け、6月末時点では前年同期比677億円増の870億円となっている。業績見通しについては修正を決定した際には速やかに開示するとしたが、単体自己資本比率が12%強あり健全性は十分だとした。
株価急落
スルガ銀の株価は1月にシェアハウス運営会社「スマートデイズ」の賃料不払いが表面化した際、同行からの融資が多いと報道されたことなどをきっかけに下落が始まった。その後も融資の際に残高を証明する通帳記録の偽造や改ざんなどを行うなど同行員の不適切融資への関与や与信費用の大幅な積み増しなどのネガティブな情報が相次ぎ、1月19日に2452円あった株価は9月7日時点で569円まで落ち込んでいる。
スマートデイズは5月に破産。物件所有者には今も賃料が振り込まれず、スルガ銀などが融資したローンだけが残っているという。8月29日に会見した所有者約280人の弁護団(団長・山口広弁護士、河合弘之弁護士)は、契約者の銀行取引履歴のコピーなどを示しつつ、書類の改ざんを指摘。「返せない借金を負わせる詐欺的なスキーム」だったとして、契約の白紙撤回を求めた。
(第三者委員会の会見内容などを盛り込み更新します.)
Read Again https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-09-07/PE7KOA6JTSES01
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