2018年9月26日水曜日

フルサイズ版ミラーレスカメラ戦争で最後発のパナが見出した「勝機」

ニコン、キヤノンが相次ぎ参戦を表明したフルサイズ版ミラーレスカメラ戦争。この戦いにパナソニックも参戦する。2019年春に製品を発売するほか、現在提携する独老舗カメラメーカー・ライカ社のマウントを採用、レンズメーカーのシグマも巻き込みレンズでも一挙に製品拡を図る。二大カメラメーカーと、ソニーなどの先行メーカーを相手に、現状では“弱小”メーカーであるパナソニックがなぜこの事業に参入するのか。パナソニックアプライアンス社の本間哲朗社長が週刊ダイヤモンドなどの取材に応じた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

パナソニックがフルサイズミラーレスに参入する
Photo:Panasonic

――これまでのパナソニックのカメラ事業の状況は。

 2001年に参入後、光学高倍率・薄型化などで一定のポジションを築いたが、その後スマ―トフォンなどに押されて苦戦した時期もあったのは確かだ。だが、その後08年に独ライカ社とのアライアンスにより、世界初のミラーレスカメラを発売し、そのバランスを取り戻した。その後も4K動画や手振れ補正など世界初の仕組みにチャレンジし、その技術は他社にも採用されている。2年前からはハイエンド市場にシフトし、特に17年に発売した機種「GH5」については、ずば抜けた動画性能で業界からも高い評価をいただいた。業績的にも、昨年度は5%を超える営業利益率を確保できている。今回のフルサイズミラーレスカメラへの参入は、今後も収益を伴った成長をするために行なう新しいチャレンジだ。

――来春発売するというフルサイズミラーレスカメラ「Sシリーズ」は、どんなユーザーを対象とした製品なのか。

本間哲朗・パナソニックアプライアンス社長
本間哲朗・パナソニックアプライアンス社長 Photo by Yoko Suzuki

 プロカメラマンだ。画質だけではなく、連写のスピード、電子ビューファインダーやグリップホールド、業界で初の100%シーリング(防塵防滴)を実現したほか、南極にまで持ち込んでも動作する技術を採用した。プロが使いたい時に必ず使える技術を全てつぎ込んだ。プロ向けのサービスセンターも秋葉原・梅田の2カ所で開設。さらに海外での業務用ビデオカメラのサポートセンターなども活用し、サービス拠点を拡充する。記録媒体には高速連写に対応したXQDカードとし、プロ仕様に対応したダブルスロットとしている。(先に発表されたニコン、キャノンのフルサイズミラーレスカメラと異なり)プロが本当に本番で使えるカメラとした。

――フルサイズカメラもほぼ最後発での参入だ。また、ミラーレス全体のシェアでも勝ち組とは言えない。勝機はどこにあるのか。

 現場から「フルサイズミラーレスカメラをやりたい」という声が上がったのは16年の初めくらいで、最初はとんでもないと思った。私は2000年からSDメモリーカードの事業責任者として、全てのカメラメーカーを回りSDカードを製品に実装していただく営業をしてきた。その時に、いわゆる光学カメラメーカーと互角に戦うハードルが高いのは理解していたからだ。

 だが、それ以前からもミラーレス技術を使ったプレミアムシフトは検討されてきていて、私がAP(アプライアンス・家電)社の社長になってからも何度も社内で議論されてきた。何に投資するか、誰と組むかなどの戦略も、その議論のプロセスの中で生まれた。

 カメラ業界が今後、フルサイズミラーレスに急速にシフトするのは明白だったし、市場で伸びるのはここしかない。ここで投資しないことはカメラ事業からの撤退を意味する。かなり長く議論をしたし、一時期そのためカメラの投資を中断していたこともあった。先行していた高級ミラーレス、GH5・G9である程度の実績を残すことがプロジェクトを実行に移すことの条件だったが、そのKPI(主要業績評価指標)を達成したことで今回、踏み切った。

 ルミックスは、残念ながら日本では弱いポジションにある。だが現在米国、ヨーロッパで主にプロで動画撮影を行うカメラマンには高い支持を得ている。この主戦場を核に、フルサイズミラーレスカメラ市場の中、グローバルで10%のシェアを狙っていく。

 最後発ではあるが、動画の分野では80年代から蓄積した技術が当社にはある。88年に開発した世界初の手振れ補正技術は、ビデオカメラを発端に他社製品にも幅広く採用していただいている。また、高画質技術であるHDR(ハイダイナミックレンジ)規格もパナソニックが立ち上げたもの。よくテレビの規格と思われているようだが、これをカメラで展開できたのは、どちらも同じAP社で開発したものだからだ。今までデジタル分野でテレビを中心にデジタルAV事業をやってきた。その中で培ったデジタル画像処理でカメラメーカーと違う積み上げができていることも強みだ。

――10年間提携しているライカに加えて、(複数社のマウントのレンズを発売しているメーカー)シグマとも提携する理由は。

 当然のことながら、ボディだけではなくレンズがないと撮影はできない。今回採用するライカ社のLマウントで50mm、24-105mm、70-200mmの3本のレンズを、19年春に静止画用の47メガピクセル、動画撮影にも対応したハイブリッド型の24メガピクセルの2種類のボディと合わせて発売する。これを含み10機種のレンズを2020年末までにそろえる。さらに、すでに発売されているライカLマウントの8機種が使えるほか、今回の製品開発に合わせて、(いままでクローズだった)Lマウントをシグマにも開放した。シグマ社からも互換レンズが発売されるはずだ。ユーザーは豊富なレンズラインナップが活用できる。

――現在展開しているマイクロフォーサーズ(フルサイズの半分程度の大きさのセンサー)ミラーレスカメラからは撤退するのか。

 来春には、マイクロフォーサーズ向けのレンズの新製品も合わせて発売する。マイクロフォーサーズの小型化でき機動力がある特性は、フルサイズと棲み分けができるはずだ。市場もフラットだが縮小はしておらず、プロカメラマンの2台目として使ってもらっている実績もある。新製品と既存製品の自社競合を心配するほどのポジショニンに当社はまだいない。幸か不幸か、我々には守るものは何もない。思い切って持ち得る物を全てつぎ込み、一眼レフの市場を獲りにいく。

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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