2018年9月23日日曜日

ローカル線「BRT転換」のメリットとデメリット 新展開は「自動運転」の導入か

経営の厳しいローカル線止して代替バスを運行することは昔からありますが、近年は「BRT」と呼ばれるバスを導入するケースも増えてきました。BRTとはどのようなバスで、どのような利点や課題があるのでしょうか。

線路の敷地にバスを走らせる

近年、利用者の減少などで鉄道の維持が難しくなっているローカル線の代替交通として「バス高速輸送システム」(BRT)が注されるようになりました。

この場合のBRTとは、止や災害で不通になったローカル線の線路敷地にバス専用を整備し、そこに鉄道の代替バスを走らせるもの。2018年8月には、九州北部2017年7月)で不通になったJR九州日田彦山線・添田~明間をBRTに転換する案が検討課題のひとつとして浮上しました。

ローカル線の代替交通としてBRTを導入した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。ひとことで言えば、鉄道バスの「いいとこ取り」がBRTメリットといえます。

おもなメリットのひとつスピード鉄道の線路と同様、一般車が進入しない専用を走るため、一般だけを走る通常のバスより所要時間を短くできます。専用渋滞も発生せず、所定のダイヤに近い時刻で運行することも不可能ではありません。

2007(平成19)年に止された鹿島鉄道茨城県)の代替バス「かしてつバス」の場合、石岡駅停留所から常陸小川停留所までの区間を25分で結んでいました。2010(平成22)年には鹿島鉄道の跡地を活用した専用が開通。「かしてつバス」も専用経由に変更され、石岡駅常陸小川間の所要時間は5~7分短い18~20分になっています。

ふたつは運行本数。鉄道車両の購入費や運行費が安く、利用者があまり多くなくても本数を増やしやすいといえます。2011(平成23)年の東日本大震災で不通になり、2012(平成24)年にBRTが導入されたJR東日本気仙沼線~気仙沼間の場合、震災前の運行本数は平日で下り12本、上り10本(うち上下各2本は仙台直通の快速「南三陸」)。これに対して現在BRTは下り34本、上り31本で、震災前の約3倍になりました。

メリットはスピード! デメリットもスピード?

3点は柔軟性の高さです。専用を走るのはバスですから、当然ながら一般にも直通可。途中だけ専用を出て一般に乗り入れ、専用から外れた病院などに立ち寄るなどして利便性を高めることもできます。また、一般渋滞する区間だけ専用を整備してバスの遅れを防ぎ、遅延がほとんど発生しない区間は一般を走るようにすれば、専用の整備費を抑えつつ鉄道のように定時運行することも不可能ではありません。

しかし、BRTメリットばかりではありません。というより、BRTメリットデメリットにもなるのです。

たとえばスピードですが、通常のバスべれば所要時間を短くできるものの、鉄道との較では必ずしもそうではありません。気仙沼線~気仙沼間は、震災前の列車が1時間2030分程度(快速「南三陸」は50分台)だったのに対し、現在BRTは約2時間と大幅に長くなりました。列車最高速度は85km/hでしたが、専用道路法規の制約もあり、60km/hくらいまでしか出せないのです。しかも一部の区間で一般を走行するため、所要時間はどうしても長くなります。

また、一般と専用を直通すれば、一般を走る区間で渋滞に巻き込まれる可性も高くなります。これでは定時運行しやすいというBRTメリットが生かせません。路線によって周辺の道路事情が異なるため一概にはいえませんが、過疎地であっても慢性的に渋滞する道路は各地にあり、決して視できない問題です。

さらに、近年はバスの運転手不足が深刻化しています。車両の購入費などが鉄道より安いとはいえ、運転手がいなければ運行本数を増やすことはできません。通常のバスが抱えている問題は、BRTでも問題になる場合があるのです。

これ以外にも、BRTにはメリットデメリットが多数あります。実際にBRTの導入を検討する場合、メリットを可な限り生かし、デメリットを極抑えるための施策もあわせて考える必要があるでしょう。

専用道を使った自動運転の実験も

ちなみに、鉄道の線路敷地をバス専用に転換した例は古くからあり、1917(大正6)年に止された銚子遊覧鉄道千葉県)の跡地を使った専用が、日本では第1号とされています。この専用はのちに線路を敷き直して銚子鉄道現在銚子電鉄)として再開業していますが、その後も鉄道の敷地を使ったバス専用が各地で整備されています。

一方、海外では1970年代以降、都市交通の一種としてBRTが登場。バス専用レーンの整備や連節バスの導入などにより、所要時間短縮や輸送強化を図る乗りものとして普及しています。しかし、日本では鹿島鉄道跡のバス専用が計画された2007(平成19)年ごろから、ローカル線の線路敷地をバス専用に転換するケースBRTと呼ばれるようになりました。鹿島鉄道気仙沼線のほか、JR東日本大船渡線・気仙沼~盛間と日立電鉄茨城県2005年止)の線路敷地を活用したバス専用BRTと呼ばれています。

このようにローカル線の代替交通として徐々に増えてきたBRTですが、ここに来て自動運転の導入というBRTの新たな可性が見えてきました。

自動車の自動運転技術は運転手不足の解決策として有効ですが、実用化には周囲にある別の自動車歩行者を回避する技術の向上など、さまざまな課題があります。その点、専用なら別の自動車歩行者が入ってくることが少なく、一般よりは自動運転を導入しやすいといえるでしょう。

実際に専用での走行実験も計画されています。経済産業省国土交通省は「ひたちBRT」の専用で自動運転バスを走らせる実実験2018年10月に行う予定。JR東日本も自動運転バスの走行実験を計画しており、12月大船渡線BRTの専用を走る予定です。法律の整備など技術以外の課題も多数ありますが、実験の結果次第では較的い段階でBRTの自動運転が実現するかもしれません。

【写真】バス専用道を鉄道に転換した銚子電鉄

JR東日本の気仙沼線BRT。東日本大震災で被災した気仙沼線の線路敷地を使ってバスを走らせている(2013年9月、草町義和撮影)。

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