2017年9月30日土曜日

日産、大規模リコールも 国内全6工場で不適切検査

 日産自動車の国内6工場で発覚したずさんな検査体制は法令順守の意識の低さを示し、ブランドイメージに打撃となりそうだ。改善できなければ仏ルノーとの企業連合で進める世界市場での拡大戦略にも響きかねない。今後、販売済みの車両の大規模リコール(回収・無償修理)に発展すれば業績に影響する可能性もある。

主力EV「リーフ」の完成検査でも不備が見つかった(神奈川県の追浜工場)
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主力EV「リーフ」の完成検査でも不備が見つかった(神奈川県の追浜工場)

 日産による記者会見から一夜明けた30日、全国に約2100ある日産系列の販売店に混乱が広がった。首都圏のある販売会社では「報道より詳しい情報は得られていない」と言い、「再検査が必要な車両の番号や再検査の方法などについて、日産からの情報提供を待っている状況だ」という。

 納車待ちの顧客からは「いつ車両が手元に届くのか」といった声が複数寄せられているが、30日の段階では回答できていない。日産はすでに検査体制を是正して国内各工場での生産を続けており、この販売会社では新型リーフを含む受注活動は続けている。

 資格を持たない従業員が新車の出荷前に必要な「完成検査」に携わっていた問題は国土交通省による9月18日以降の立ち入り調査で発覚した。追浜工場(神奈川県横須賀市)など国内に6つある完成車組み立て工場の全てで同様の不備が確認されており、再検査のために顧客への引き渡しを停止した6万台の中には日産が国内で販売するほぼ全ての車種が含まれる。

 大量生産車の安全性などを審査する型式指定制度では、本来は1台ずつ国が行う検査を工場から出荷する直前の完成検査を通じて車メーカーが肩代わりする形式をとっている。国の車メーカーに対する信頼を裏切ったという意味では、三菱自動車が燃費データを水増しして国に届け出ていた問題に似ており、石井啓一国土交通相は「制度の根幹を揺るがす行為だ」と日産を厳しく批判するコメントを出した。

 日産は無資格の従業員による完成検査が見過ごされていた理由や、いつごろから行われていたのかについて「調査中だ」としている。すでに顧客の手に渡った車両についても、完成検査のやり直しが必要と判断した場合には国交省にリコール(回収・無償修理)を届け出る方針で、対象は最大で100万台規模になる恐れがある。

 海外では安全性を審査する制度が異なるため、日産は輸出向けの車両については「完成検査の不備による影響はない」としている。国交省の指摘を受け検査体制を是正した9月下旬以降の生産車については、通常通り顧客への引き渡しを続ける方針だ。

 2016年11月に部分改良し発売した小型車「ノート」のヒットなどで、日産の国内販売は今年8月まで10カ月連続で前年実績を上回っている。収益源である米国市場の勢いに影が差すなか、日本市場の重要性は増しており、業績への打撃を最小限に抑えるには徹底した原因究明と消費者への情報開示を急ぐ必要がある。

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