東芝は28日、半導体メモリー子会社の売却で「日米韓連合」と正式契約を結んだと発表した。債務超過解消のために決断した「虎の子」事業の売却で収益は大きく目減りする。メモリー売却後、年1千億円を超える営業利益を稼げる事業は見当たらない。成長戦略をどう描くかという難題が経営陣の前に立ちはだかる。
「不良品が発生した原因がすぐにわかるようになった」
「欠陥検査の効率も格段に上がった」
三重県四日市市の東芝メモリ四日市工場。米ベインキャピタル率いる日米韓連合に売却されることになったメモリー事業の主力工場で、東芝の新たな収益源と期待されている技術が成果をあげている。
人工知能(AI)を組み合わせた「SPINEX(スパインエックス)」と呼ばれる東芝のIoT(すべてのモノがネットにつながる)技術だ。SPINEは英語で「脊髄」を意味する。企業の活動を脊髄のように支えるという意味が込められている。
工場の中にある製造装置や搬送装置から1日あたり約20億件にもなるデータを収集する。集めたデータは大規模サーバーが処理する。
四日市工場では、不良品発生の原因を推計するのに平均6時間かかっていたが、SPINEX導入で2時間以内に縮まった。欠陥検査のうち、自動化できていた割合は5割弱だったが、導入後は8割強に上がった。
IoTやAIに関する技術では、NECや富士通をはじめとする情報システム企業が実績を重ねている。そうした状況で東芝が強みにできるのは「これまで蓄えてきたものづくりの経験」(東芝幹部)。グループ各社の様々な種類の生産現場で実際に使われていることを示し、生産の効率化に貢献することをアピールする考えだ。
SPINEXをはじめとするIT(情報技術)技術に基づいたサービスを提供しているセグメント(事業部門)が「インダストリアルICTソリューション」だ。東芝関係者が期待を寄せるセグメントだが、その規模はまだ小さい。
ITサービスは他部門の製品・サービスと組み合わせて販売することが多く、インダストリアルICTの収益規模は実態より小さくなる。
とはいえ、2017年3月期の売上高は2384億円で、営業利益は116億円。いずれもグループ全体の数値に対する比率は5%にすら届かない。
しかも、看板技術のSPINEXを構成するIoTは、競合の日立製作所や米ゼネラル・エレクトリック(GE)も最注力分野に据えている。東芝の連結売上高が5兆円弱なのに対し、日立は約9兆円。GEは日本円換算で15兆円を超える。東芝が競争に勝ち抜けるかどうかは未知数だ。
「株式市場で『半導体銘柄』とみられているウチが半導体子会社を売ったら何が残るのか」
ある東芝社員がこうこぼすほど、東芝における半導体事業の存在感は大きい。
17年3月期の東芝の連結営業利益の2708億円のうち、9割強を稼いだセグメントが半導体事業を持つ「ストレージ&デバイスソリューション」だ。そのほとんどを今回売却する東芝メモリが生み出している。それ以外のセグメントは利益貢献度では「どんぐりの背比べ」の状況だ。
Read Again https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2165731028092017X11000/
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