世界の金融市場が米国発のリスクに動揺している。想定以上に好調な米経済指標に驚いた投資家が債券を売り米国の長期金利が急上昇。米国株の急落を誘発し世界に株安が連鎖した。5日の東京市場では日経平均株価が前週末比592円(2.5%)安と1年3カ月ぶりの下げ幅になった。景気の拡大と金融緩和による低金利が共存する「適温経済」の持続力が試されている。
「朝方から海外勢の売りが目立った」とクレディ・スイス証券の牧野淳氏は話す。日経平均が心理的な節目の2万3000円を下回ると、短期的な下落局面に入ると見たヘッジファンドが日本株に売りを出した。日経平均の終値は2万2682円で年初からの上昇分を打ち消した。
株安の発端は米金利の上昇だ。2日のニューヨーク市場で長期金利の指標となる10年物国債利回りが一時、2.85%と約4年ぶりの水準に上昇した。米国は景気が拡大する中でも物価は緩やかな上昇にとどまっていた。しかし、前週末の米雇用統計が想定以上に良い内容で、今後は物価上昇のペースが速まるとの見方が債券売りを誘った。
運用難で株式に資金を振り向けてきた投資家は金利上昇を受けて株式に売りを出した。現状の企業業績に比べ「米国株は割高感が意識される水準にあった」(三井住友アセットマネジメントの吉川雅幸氏)ことも売りに拍車をかけ、2日のダウ工業株30種平均は9年ぶりの下げ幅になった。
米国を起点とするリスク回避の流れは世界に連鎖した。5日は台湾株が2%安となり韓国やインドネシアなどアジア株が下落した。英国とドイツは17年末と比べた株価騰落率が下げに転じた。ニューヨーク市場の金相場は5日、1トロイオンス1330ドル台と1月の高値から3%弱下落した。5日の米国株は下げ幅が一時、300ドルを超えるなど不安定な値動きが続いた。
米連邦準備理事会(FRB)は緩やかな利上げで適温経済を演出してきた。それが株高の大きな要因だが、景気が過熱感を帯びるようだと利上げペースが加速する可能性がある。米家計の住宅ローン残高は昨年9月に10兆ドルを超えてピークに近づく。金利上昇が企業や家計の資金調達に影響すれば景気の好循環シナリオが揺らぎかねない。
適温経済が長く続き金融市場にはひずみも蓄積する。米シティグループによると世界の社債発行残高はおよそ6.7兆ドル(約730兆円)と10年間で2倍以上に増加した。信用力が低い国や企業でも低金利で発行できる「債券バブル」は金利上昇で修正されそうだ。
ただ、株価の前提となる企業業績は好調だ。日本の上場企業は18年3月期に純利益が過去最高になる見込み。米国も企業の1株利益は過去最高の水準にある。ニッセイアセットマネジメントの三国公靖氏は5日の株式相場について「海外マネー主導による過剰反応だ」と見ていた。
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