2018年2月1日木曜日

コインチェック事件で見えた「仮想通貨の成功者は百人に一人」の現実

ブロックチェーン、おそるべし

「ハッカー被害にあっても、ネット上で公開されているブロックチェーンの解析で、流出ルートを追跡できた。アドレスの特定とタグ(目印)付けで、換金は事実上、不可能。コインチェックの大甘管理が、皮肉にも仮想通貨の信頼性を高めた」

仮想通貨取引所の関係者が、複雑な表情でこう述べる。

コインチェックから580億円もの仮想通貨が引き出された事件で、最初に攻撃されたのは、被害者のコインチェックだった。

タレントの出川哲朗を起用したテレビCMを打ちまくって顧客を集め、仮想通貨取引所の最大手となったにも関わらず、仮想通貨NEM(ネム)をインターネットで接続された「ホットウォレット」と呼ばれる状態で管理、しかも複数の秘密鍵を必要とする「マルチシグ」を導入していなかった。

そのコインチェックの大甘管理が批判される一方で、誰もが驚いたのは、ブロックチェーンの公開制と追跡機能だ。

NEMのブロックチェーン技術の普及を目指して設立された非営利のNEM財団(本部・シンガポール)は、「私たちは、あらゆる手段を用いてコインチェックを支援しており、24時間から48時間以内に盗まれた通貨にタグ付けするシステムを開発する」と、宣言した。

実際、日本でも専門家が追跡、「NC4」から始まる40桁のアドレスに送金され、そこからさらに9つのアドレスに二次送金されたことが確認された。

捜査着手した警視庁でもアドレスを確認。ハッカーは、そこからさらに3次送金をしているが、捜査当局と仮想通貨業界関係者が監視している以上、法定通貨に換えての現金化は不可能で、仮想通貨のブロックチェーンを利用した強みを証明した。

2017年は、指標となるビットコインが1年で20倍に急騰、テレビや雑誌、新聞などに広告が掲載され、「億り人」と呼ばれる投資成功者が富を誇って、仮想通貨バブルの年となった。そこにコインチェック事件は、冷水を浴びせかけた。

だが、これでブームが冷え込む兆しは見えず、そこが14年のマウントゴックス事件と違うところだ。仮想通貨の時価総額は5000億ドル(約55兆円)と、世界経済に基盤を築いており、新たな経済システムを構築する、とみなす利用者、顧客は少なくない。

そこには、労働の対価として現金が支払われる実体経済をはるかに上回る金融経済が、実体経済をおとしめて二極化を推進、円やドルといった法定通貨が、人間を幸福にする方向に機能していないという現実がある。

カネ余りが生むマネーゲームが、サブプライムローンを生み、それを母体とするインチキな証券化商品が、リーマンショックとなって世界経済を破壊させた。

それから10年が経過したが、教訓は生かされておらず、主要各国は相変わらずカネ余りにして景気と株価を維持。リーマンショック時に5京(兆の1万倍)円だったウォーレン・バフェットのいう大量破壊兵器の金融派生商品(デリバティブ)は、16京円に達している。

いつバブルが崩壊してもおかしくない危うい均衡のうえに世界経済は成り立っている。仮想通貨は、国が発行権を持ち、通過供給量を決めて景気を調製する法定通貨とは違い、トークンと呼ばれる通貨引換券で新しい価値の経済圏を作ろうとする。

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