政府が日銀の黒田東彦総裁を4月に再任する人事案を国会に示した。副総裁には、日銀の雨宮正佳理事と若田部昌澄早大教授を起用し、今後5年間の金融政策を託す。
日銀の大規模な金融緩和は、安倍晋三政権の経済運営の根幹である。引き続き黒田氏に委ねるのは、景気回復を支えてきた手腕を評価し、緩和路線の踏襲に期待しているためだろう。
政策の一貫性を保ち、日本経済が二度とデフレの淵に沈まないようにする。そういう政権の意思表示ともいえよう。
着実な成果が求められる。緩和が長引けば、銀行収益の圧迫などの副作用が拡大する懸念も強まるだろう。
脱デフレを確実にすれば、異例の金融政策を通常に戻す「出口戦略」が焦点となる。新体制には難しいかじ取りが求められる。
黒田氏を代えないと判断した首相は、その成否に重い責任を負う。日銀との意思疎通を密にしつつ、アベノミクスの足らざる部分を改善する契機にもすべきだ。
新体制は国会の同意を得た上で始動する。黒田総裁の下、日銀出身者と、積極的な金融緩和を唱える学者の2人を副総裁に据える構図は基本的に変わらない。
この5年、大規模緩和が支える形で株高や円安が進み、企業収益は大きく改善した。アベノミクスを象徴する黒田氏の続投は、景気回復を成果としたい政権にとって無難な判断ともいえよう。
ただ、黒田氏が就任時に「2年で2%」と宣した物価上昇率目標は、いまだ果たせていない。力強い経済が物価を押し上げる状況には至っておらず、デフレに戻る懸念もまだ残る。その結果、緩和を続けざるを得ない。それが現実であることを忘れてはなるまい。
このままでは、いずれ出口戦略を進める際、市場や経済が混乱するリスクが高まりかねない。その点に目を配ってほしい。
直ちに金融政策を変更するのは現実的でないとしても、新体制は緩和効果や政策の方向性を改めて検証し、国民に丁寧に説明すべきである。
脱デフレが金融政策のみで果たせるものでないことは、言うまでもない。民需を喚起し、消費や投資を促す政権の経済政策をいかに徹底できるかだ。単に従来の路線を踏襲し、展望が開けるような簡単なものではない。
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