2018年6月19日火曜日

「ユニコーン」日本見劣り、ポスト・メルカリはわずか

 フリーマーケットアプリのメルカリが19日、東証マザーズ市場に株式を上場した。時価総額は7172億円と今年最大のIPO(新規株式公開)となり、「ユニコーン」と呼ぶ世界標準にかなう成長企業の証明を果たした。だが、日本に次のユニコーン候補は少ない。メルカリ上場は日本のスタートアップ企業の問題点も浮き彫りにする。

 「日本を代表するテックカンパニーになる」。上場後に記者会見した山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)は語った。創業からわずか5年。10億ドル(1100億円)以上の企業価値を持つ未公開企業という、ユニコーンの定義を軽々クリアした一日となった。

 公開価格3000円を7割近く上回る5000円で初値が付き、一時6000円と制限値幅の上限(ストップ高)まで上昇。その後、やや値を下げたものの公開価格の1.8倍の5300円で初日の取引を終えた。

 時価総額は従来の東証マザーズの首位、ミクシィ(2300億円)を大幅に上回り、全上場企業の中でもローソン(6870億円)を超えてリコー(7500億円)に並ぶ水準だ。

 だが、メルカリが上場した後、次の有望なユニコーンは数少ない。米国や中国には有望株がひしめいている。

 米調査会社CBインサイツの調べによると世界にユニコーンは240社。米国企業が116社、中国企業が71社にのぼる。日本は人工知能(AI)開発のプリファード・ネットワークスや健康器具「シックスパッド」を手掛けるMTGなどごくわずかだ。

 規模も桁違いだ。4月に米国で上場したスウェーデン発祥の音楽配信大手スポティファイ・テクノロジーは上場初日の終値ベースでの時価総額が3兆円弱。3月上場のクラウドデータ保管・共有大手のドロップボックスも1兆円を超えた。

 さらに巨大な予備軍が控える。近く上場が見込まれる米ライドシェア大手ウーバーテクノロジーズや中国スマートフォン大手の小米(シャオミ)の企業価値は5兆円超えが見込まれている。

 日本でユニコーンが育ちにくい背景には「投資マネーの少なさと開業率の低さがある」とニッセイ基礎研究所の中村洋介氏は指摘する。年金基金などのマネーがベンチャー投資に回らず、17年度のベンチャー投資額は約1300億円。約800億ドルの米国とは大きな開きがある。日本ベンチャーキャピタル協会の仮屋薗聡一会長は「メルカリ上場が機関投資家のお金が本格的にスタートアップに流れる契機になれば」と期待する。

 メルカリのように当初から海外市場を見据えている企業の少なさも問題だ。メルカリは米国事業の担当に米フェイスブックからジョン・ラーゲリン氏を招いた。ラーゲリン氏は「機械学習など先端技術を導入し米国で勝つ体制をつくる」と語る。

 日本政府は23年までに企業価値が10億ドル以上の企業の数を20社に増やす目標を掲げ、海外展開などを支援する。ユニコーンの育成は日本経済の競争力を左右する。

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