スズキが中国での自動車生産から撤退する。4日、中国の自動車大手、重慶長安汽車との合弁事業を解消することで合意したと発表した。小型車を得意とするスズキは多目的スポーツ車(SUV)など大型が主流の中国市場で苦戦していた。世界2位の米国市場に次ぎ最大の中国市場からも撤退、成長が続くインドやライバルが手薄なアフリカなどにかじを切る。
重慶長安とは1993年に合弁会社、重慶長安鈴木を設立した。スズキが保有する50%の株式を重慶長安に売却することで合意した。年内をめどに手続きを完了させる方針だ。株式の譲渡額は明らかにしていない。
スズキは6月に、もう一つあった中国合弁事業を解消した。合弁相手の江西昌河汽車に保有していた46%の株式を譲渡した。2つの合弁を合わせて、中国での生産は過去最高だった2010年度に比べて17年度は7割少ない8万6000台まで落ち込んでいた。
合弁解消後も当面は重慶長安側がスズキからライセンス供与を受けて生産を続ける。ただ実際は「中国の販売の改善が見通せず、中国向けの車両開発にも資金を投じることができない」(同社幹部)と話す。
これでスズキは中国と米国という世界1、2位の市場から実質的に撤退することになる。スズキと同じ国内中堅のマツダはトヨタ自動車と共同出資会社を設立して米国市場の開拓に臨むが、スズキに世界の2大市場から撤退することへの後ろめたさはない。
スズキはインドを軸に、進路をインド対岸のアフリカや中近東など、日本車メーカーが手つかずの「未開拓地」にかじを切る。スズキのラインアップにないEVが競争の軸になる中国や大型車が中心の米国市場は勝ち目がないと見て、ためらいなく中国・米国市場を見切る。
逆に力を入れるインドの乗用車シェアの5割を握る。17年度には前年度比14%増の165万台を販売した。独フォルクスワーゲン(VW)や、日産自動車も仏ルノーと組んで地域戦略車を投入したが伸び悩む。米ゼネラル・モーターズ(GM)は昨年、販売撤退に追い込まれた。あえて大手が見向きもしなかった1980年代に進出、現地の有力者との人脈を築きながら広げた販売網は世界の大手の挑戦をうけても崩されることはなかった。
そのスズキは30年にインド市場が現在の3倍の1000万台に達すると見たうえで「引き続きシェア5割を確保するために500万台を販売する」(鈴木修会長)と、強気の目標を掲げる。
インドだけでなく、同国をハブにアフリカ市場への進出もにらむ。まだ苦戦が続くが、大きなライバルがいないハンガリーも引き続き、ロシアや東欧、中央アジアをにらんだ拠点として育てていく計画だ。
「うちみたいな中小企業が大手に太刀打ちできるはずがない」と修会長はいつも周囲に自嘲気味に語る。しかし、その言葉の裏には「他社と違うことをしないと生き残れない」とのしたたかな計算がある。
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