任天堂の業績回復にスイッチが入った。26日に発表した2017年4~6月期の連結決算は、最終損益が212億円の黒字と、245億円の赤字だった前年同期から急回復した。けん引役は3月発売の家庭用ゲーム機「Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)」。だが足元では品薄が続いており、需要期の年末商戦に向けて課題は多い。
7月22日、大阪市の大型家電量販店、ビックカメラなんば店が開いた抽選販売会に約2千人が列をなした。お目当てはスイッチ。だが販売台数は30台だけ。三重県名張市から親子連れで来た40代男性は「3週連続で並んでいるが外れが続いている」と嘆いた。
スイッチは据え置き機でありながら、屋外に持ち出して複数人で遊べる目新しさがゲームファンの心に響いた。有力なゲームソフトを数カ月おきに用意したこともヒットにつながった。
業績はV字回復した。黒字幅は4~6月期としては08年以来、9年ぶりの高水準。円高のため前年同期は350億円あった為替差損が71億円の差益に転じた。
売上高は2.5倍の1540億円で、スイッチの販売台数は197万台だった。ゲーム機は世界的に需要が集中する年末に向けて販売数が増える傾向がある。任天堂は18年3月期のスイッチの販売台数目標を1千万台にしており、「目標を超える可能性が高まった」(エース経済研究所の安田秀樹氏)。
ソフトも売れた。「ゼルダの伝説」シリーズの最新作などがけん引し、スイッチ向け販売本数は814万本になった。ゲーム機1台に対するソフト販売は4.1本で、06年末に発売した先々代機で大ヒットした「Wii」の発売後4カ月の4.9本と肩を並べた。
今月21日には人気のシューティングゲーム「スプラトゥーン2」を発売し、ソフトの需要は一段と強まっている。ゲーム情報誌「ファミ通」によると、同ソフトの発売後3日間での国内販売本数は67万本に上った。スイッチ購入者の56%が買った。
悩みの種がスイッチの品薄だ。任天堂は7、8月に増産し、秋にかけてさらに増やす方針だ。「生産計画を前倒しして需要に応えようとしている」(同社幹部)というが、年末商戦の需要を賄いきれるかには不透明感が漂う。
増産を阻むのが高機能スマホの販売増などを受けた電子部品の需給逼迫だ。任天堂は新興国などにも調達先の拡大を検討しているとみられるが、順調に進むか不安視する見方が出ている。
4~6月期の業績好調を受けても、18年3月期通期の売上高は前期比53%増の7500億円、純利益は56%減の450億円とする従来予想を据え置いた。純利益は前期に米大リーグ、シアトル・マリナーズの持ち分売却益645億円を計上した反動が出る。
Wiiの販売が最盛期で純利益が過去最高だった09年3月期の2791億円には遠く及ばない。移ろいやすいゲーム業界でファンの要求を満たし続けられるか。真の復活は道半ばだ。(上田志晃)
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