東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却で、買い手の有力候補の「新日米連合」に加わっている米ウエスタンデジタル(WD)が、買収後に同子会社の経営に強く関与することを示唆していたことがわかった。東芝は難色を示し、8月中に交渉がまとまらなかった要因となった。
新日米連合は、東芝が半導体事業で協業するWDと、政府系の産業革新機構、日本政策投資銀行、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などで構成され、約2兆円の買収額を提示した。
WDは株式転換できる1550億円分の社債を引き受ける形で資金を出す。将来株式に転換すれば、議決権の15%前後にあたる株式を持つ見通しだ。
当初WDは、将来も重要事項を拒否できる議決権の「3分の1超」にあたる株式は求めないとみられていた。8月28日までにWDのミリガンCEO(最高経営責任者)が来日し、東芝の綱川智社長と会談。31日の東芝の取締役会で契約締結を決める予定だった。
ところが関係者によると、会談後WD側から送られた契約案には、将来WDが他の出資者から株式を取得するなどして、保有比率を議決権の「3分の1超」まで増やせると示唆する内容が入っていたという。
このため東芝は、長期的にWDの保有比率を一定以下に抑えることを明記できないか検討するため、決定を先送りした。
東芝は8月31日、「交渉先を特定陣営に絞り込んだことはなく、3陣営との交渉を継続している」とコメントした。以前の優先交渉先だった「日米韓連合」や台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との協議も続けるという。
ただ、この2陣営への売却の検討は進んでいない。土壇場で新日米連合との交渉がまとまらなかったことで、売却にさらに時間がかかる可能性が出てきた。各国の独占禁止法の審査にも半年程度かかるとされる。売却益で来年3月末までに債務超過を解消する計画が不透明になりかねない。
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