[大阪 25日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は25日、大阪市内で講演後に記者会見し、欧米と異なり日本では人々の物価観が十分上がっておらず、「緩和の見直しは時期尚早」との見解をあらためて示した。衆院選や財政健全化の後ずれなどについてはコメントを控えた。
日銀の大規模金融緩和が財政規律に影響を与えることはないと言明。マイナス金利での大幅な利下げはないとの見解も示した。
<金融政策が財政運営に影響及ぼすことない>
欧米の中央銀行は物価が目標の2%に達しない中で緩和の縮小に動き始めたが、黒田総裁は「欧米では2%程度にアンカーされている期待インフレ率(物価観)が、日本では弱めの状況にある」とし、緩和縮小方向への政策転換を否定した。
衆院選で政府が消費増税の使途変更を打ち出し、2020年の財政健全化目標の達成は先送りされたが、「財政政策は政府・国会が責任を持って運営するもの」としてコメントを控えた。日銀の大規模緩和で金利上昇圧力が減殺されていることが、政府の財政健全化を遅らせているとの指摘に対し、「中央銀行の金融政策運営が政府・国会の財政運営に影響を及ぼすことはない」とした。また「財政運営を考慮して金融政策を運営することもない」と述べた。
10月の衆院選では安倍政権の経済政策であるアベノミクスが争点となるのは必至で、政府・日銀が掲げる2%の物価目標も議論される可能性がある。この点で黒田総裁は「日銀は、2013年に政府・日銀が(2%目標を掲げた)共同声明を出す前に、金融政策決定会合で2%目標を決めた」と指摘。2%目標追求は日銀の主体的決定との建前を確認した。
<マイナス領域での大幅利下げはない>
同日の講演で総裁は2%の物価目標を追求する理由のひとつとして、景気後退期に利下げ余地を確保するためと説明した。この点に関して、「マイナス金利の領域では4%や5%など大幅な利下げがあるとは思えない」と述べ、マイナス金利での大幅な利下げは事実上難しいため、利下げ余地を確保するためにも、物価上昇による名目金利の一定の上昇が望ましいとの見解を示した。
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