2017年9月26日火曜日

格安スマホ、大手が包囲網 楽天のフリーテル買収

 成長著しい格安スマートフォン(スマホ)市場に、早くも再編の波が押し寄せている。シェア4位の楽天は26日、6位の「フリーテル」を買収すると正式に発表した。格安の旗手と目されたフリーテルも実情は赤字続きで、最後は楽天が「買いたたいた」(関係者)格好だ。背景には格安市場でも通信大手の攻勢が強まり、独立系を追い込んでいる実態がある。

 「まだ引き下げる余地があるだろう」。25日夜、都内の楽天本社。臨時取締役会を翌朝に控えながら、モバイル事業の担当幹部が最後の折衝を続けていた。フリーテルを展開するプラスワン・マーケティング(東京・港)は同日昼までにフリーテル事業の売却を決議していた。にもかかわらず楽天ではギリギリまで値引き可能と見ていたのだ。

 決着した譲渡額は5億円強。楽天が引き継ぐ負債を含めた買収総額も約36億円だ。「業界最速」の広告表示が消費者庁から処置命令を受ける失策もあったが、フリーテルはかつての格安スマホの代名詞的な存在。東海東京調査センターの石野雅彦氏は「買収額の小ささは格安スマホの事業環境が全般に厳しい実態を示している」と指摘する。

 買収手続きは11月1日に完了する予定。4位の楽天のシェアは、ソフトバンク系とNTT系に次ぐ3位に浮上する。主要な格安スマホ事業者を巡るM&A(合併・買収)は今回が初めてだ。ただ、今の格安スマホ市場は規模の拡大が競争力に直結するとは限らない。

 楽天やフリーテルといった独立系の事業者はNTTドコモなどの通信大手から携帯回線を借りてサービスを提供している。高額過ぎた回線料金が劇的に下がったことが普及を後押しし、格安スマホのシェアはスマホ全体の1割を超えた。だがここに来て市場は曲がり角を迎えている。理由は大きく2つある。

 1つ目は顧客流出に危機感を募らせる通信大手の反撃だ。ソフトバンク系のワイモバイルやKDDI系のUQモバイルなど大手系列が資金力にモノをいわせて大々的に広告を打ち始めた。ワイモバイルはすでに全国1000店舗を持ち、サービスが行き届きにくい独立系の弱点を突く形で勢力を広げている。足元の新規契約者数はこれら大手系が5割を超え、通信大手3社による市場の寡占が進んでいる。

 もう一つは格安スマホの普及を促した回線料金の下げ止まりだ。ドコモの場合、2013年度までの5年間で回線料が10分の1に急低下したが、その後の3年間は平均10%台の下げにとどまっている。

 総務省が定めた回線料の算定式には「適正な利潤と原価」の項目があり、何が適正かは最終的に総務省が承認する。だが通信大手の言い分が反映される余地もあり不透明との批判が絶えない。KDDIとソフトバンクはドコモよりさらに割高な料金を課しており独立系の選択肢は限られる。

 独立系は販売最前線で大手系の猛攻を受け、生命線となる回線料金でも締め付けにあう。通信インフラを握る大手が繰り出す正攻法と兵糧攻めの二段作戦を前に、今後も生き残りをかけた消耗戦が続きそうだ。(大西綾、杉本貴司)

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