2017年9月21日木曜日

日銀:金融政策は8対1で現状維持、緩和不十分と片岡氏が反対

日本銀行は21日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を8対1の賛成多数で決定した。片岡剛士審議委員が現在の緩和は「不十分」として反対した。

  金融調節方針は、誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いた。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持した。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も維持した。

  7月に審議委員を退任した木内登英、佐藤健裕両氏の後任である片岡氏と鈴木人司氏にとって初めての会合だったが、片岡氏は議長案に反対、鈴木氏は賛成と票が分かれた。木内、佐藤両氏は前回7月会合まで、副作用を理由に現在の緩和策に反対票を投じてきた。ブルームバーグがエコノミスト45人を対象に8-13日に実施した調査では、全員が金融政策の現状維持を予想していた。

  発表文によると、片岡氏は「資本・労働市場に過大な供給余力が残存している」とした上で、現在のイールドカーブ(金利曲線)の下での金融緩和効果は「2019年度ごろに2%の物価上昇率を達成するには不十分である」として反対した。消費者物価の前年比が「2%に向けて上昇率を高めていく」との見通しに対しても、「来年以降、2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低い」として反対した。

  ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストは発表後のリポートで、片岡氏について「19年度ごろの2%を目指すのであれば追加緩和が必要であり、そうでなければ2%の到達予想を先送りすべきとの考えだろう」と指摘した。

ブルームバーグの事前調査の結果はこちら

  日銀は7月の展望リポートで物価目標の2%達成時期を18年度ごろから19年度ごろに先送りした。黒田東彦総裁が就任直後の13年4月に2年をめどに目標を達成すると宣言してから達成時期先送りは6回目。昨年9月に金融調節方針の操作目標をお金の量から金利に転換する長短金利操作を導入して1年たつが、物価上昇の歩みは遅く、緩和策の見直しを求める声も出ている。

  三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎シニアエコノミストはブルームバーグ調査で、一連の金融政策が物価押し上げに「全く効果がなかったことは明らかだ」と指摘。黒田総裁の続投か交代かに関わらず、来年4月の任期満了後が金融政策の見直しには絶好の機会だとして「18年4月もしくは7月に出口に向けた方向が示される」と予想した。

  ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは、物価目標達成が長期にわたり見通せない中、「出口における副作用が蓄積されており、これまで以上に十分な検証が必要だ」という見方を示した。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは、大胆な金融緩和は「初動においては適切だった」としながらも、将来的な政策コストを考慮すると、「徐々に収束を図る必要があるだろう」としている。

  会合結果の発表前は1ドル=112円台半ばで取引されていたドル円相場は、発表後もほぼ同水準で推移している。黒田総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。

  決定会合の「主な意見」は29日、「議事要旨」は11月6日に公表する。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。

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