2018年2月17日土曜日

円高阻止難しく、105円台に 日銀新体制でも効果薄

 外国為替市場で円高・ドル安が止まらない。16日の東京市場では一時1ドル=105円台と1年3カ月ぶりの高値を付けた。米国の財政悪化懸念に伴うドル売りの威力にあらがうのは難しく、脱デフレを目指す日銀の新体制にはさっそく悩みの種となりそうだ。

 16日午前2時、日本経済新聞電子版が日銀の次期副総裁に若田部昌澄早大教授の起用案を報じると、米ニューヨーク市場では約30分で50銭ほど円安・ドル高が進んだ。

 積極的な金融緩和を訴える「リフレ派」の伏兵を据えることで、デフレ脱却に向け金融緩和を続けるとの安倍政権の意図を感じたためだ。大和証券の岩下真理氏は「今回のリフレ派副総裁は円高抑制の手段」という。

 もっとも円安効果はすぐに息切れし、16日の東京市場では円高・ドル安がじわじわと進行。午前11時、政府が国会に黒田東彦総裁の続投、若田部氏と日銀の雨宮正佳理事を副総裁に充てる人事案を提出しても市場の反応は鈍かった。

 アール・ビー・エス証券の剣崎仁氏は「追加緩和の余地がない、という市場の見方が変わったわけではない」と指摘する。若田部氏はこれまで2%の物価安定目標の実現に向け追加緩和を訴えてきた。昨年12月の日本経済新聞のインタビューでは「(金融緩和の)量と質の拡大が有効な選択肢だ」と強調。日銀が保有する国債の増加額を年80兆円メドから90兆円メドに拡大すべきだと主張していた。

 日銀の金融政策は9人いる政策委員の多数決で決まる。現行政策の維持に反対票を投じているのは、追加緩和を求める片岡剛士氏のみ。若田部氏が入っても評決を覆すのは現実には困難だ。

 現職の岩田規久男副総裁はリフレ派の先駆者として日銀に入ったが、16年9月に金融緩和の操作対象を量から金利に切り替えることに賛成した。

 その後、物価目標の達成時期が後ずれしても追加緩和を求めていない。副総裁は一致団結が求められる執行部の一員で、独断の行動をとりづらい。首相官邸の後ろ盾はあるかもしれないが、若田部氏がどれほど影響力を持てるのかわからない。

 日銀が当面動けないとの観測が根強い一方で、市場の関心が向かうのは米国発のドル安だ。みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「為替市場のテーマは米財政赤字拡大などを受けたドル安で、日銀の手で止めるのは難しい」と見る。トランプ政権が進める大型減税、国防費の増加、インフラ投資が市場に財政悪化を意識させ、ドル売りが勢いづいているからだ。

 皮肉なことに16日の東京市場では一時1ドル=105円台半ばまで円高・ドル安が進み、財務省と金融庁、日銀はこの日、国際金融資本市場について情報交換する3者会合を開き、市場をけん制せざるを得なくなった。

 菅義偉官房長官も16日の記者会見で「必要なときは適切に対応する方針は全く変わりない」と語ったが、政府も日銀も有効な手立てを打ち出せていないのが実情。市場では「1ドル=100円割れの世界が現実味を帯びてきている」(みずほ銀の唐鎌氏)との声も出ている。

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