2018年2月16日金曜日

円高阻止難しく、1ドル=105円台に、日銀新体制でも効果薄、ドル売り圧力続く

 外国為替市場で円高・ドル安が止まらない。米国の財政悪化懸念に伴うドル売りの威力にあらがうのは難しく、脱デフレを目指す日銀の新体制にはさっそく悩みの種となりそうだ。

 16日夕、日銀副総裁への起用が固まった雨宮正佳日銀理事は緊張した面持ちで財務省に入った。同省と金融庁、日銀の3者会合で足元で急速に進む円高への対応を話し合うためだ。

 会合後、浅川雅嗣財務官は記者団に「為替市場は一方的に偏った動き」と発言。菅義偉官房長官も会見で「適切に対応する方針は全く変わりない」と語ったが、政府・日銀が有効な手立てを打てると見る向きは少ない。

 円高トレンドの震源が、もっぱら米国発のドル売りだからだ。みずほ銀行の唐鎌大輔氏は「為替市場のテーマは米財政赤字拡大などを受けたドル安で、日銀の手で止めるのは難しい」と見る。

 トランプ政権が進める大型減税、国防費の増加、インフラ投資が市場に財政悪化を意識させ、ドル売りが勢いづく。市場では「1ドル=100円割れの世界が現実味を帯びてきている」(唐鎌氏)との声も出ている。

 人事案提示日の皮肉な円高。積極的な金融緩和を求めるリフレ派、若田部昌澄早大教授を副総裁に充てる案には「円高抑制の手段」(大和証券の岩下真理氏)との受け止めが多い。

 実際、もう少し物価が上がれば政策委の一部でくすぶる金利水準の引き上げ論に執行部がなびくシナリオもあったが、若田部氏投入で現実味が薄れたとの観測がある。それでも16日の東京市場では一時1ドル=105円台半ばまで円高・ドル安が進んだ。

 言動が注目される若田部氏だが、副総裁になったとしても意見が通るとの見方は少ない。日銀の金融政策決定は9人いる政策委員の多数決。現行政策の維持に反対票を投じているのは片岡剛士氏のみで、もし若田部氏が反対票を出しても大勢は変わらない。

 そもそも副総裁は日銀法上、執行部の一員として総裁を補佐する役割を担い、一致団結が求められる執行部の中で独断の行動はとりづらい。

 現職の岩田規久男副総裁はリフレ派の先駆者として日銀に入ったが、16年9月に金融緩和の操作対象を量から金利に切り替えることに賛成。その後は物価目標の達成時期が後ずれしても追加緩和を求めていない。

 現メンバーの中でも、リフレ派の原田泰氏は若田部氏ほど「量の拡大」にはこだわっていない。アール・ビー・エス証券の剣崎仁氏は今回の人事について「追加緩和の余地がない、という見方を覆すほどではなかった」と指摘する。

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