2018年2月18日日曜日

客数減が止まらない、「モスバーガー」の苦境


モスバーガー1号店である東京・板橋区の成増店は1972年にオープン。以来、店舗網を全国に広げてきたが、直近では客数、店舗数ともに減少傾向が続く(編集部撮影)

ハンバーガーチェーンで国内店舗数2位のモスバーガーが苦しんでいる。

モスバーガーを運営するモスフードサービスは2月9日、2017年度第3四半期(2017年4〜12月期)決算を発表した。売上高は544億円(前年同期比0.8%増)と横ばいながら、本業の儲けを示す営業利益は33億円(同19.6%減)と減益で着地した。

減益の主な要因は、牛肉など食材の価格高騰や、システム関連投資に伴う償却負担がかさんだことだ。一見すると、一時的な要因による業績低迷にも思えるが、モスバーガーの苦戦は今に始まったことではない。

SNSを通じた販促が不十分

モスバーガーの既存店客数は2013年度から4期連続で減少している。今2017年度も2017年4月〜2018年1月の累計の既存店客数は前年同期比1%減。こんなにも長く客数減が続いているのはなぜか。理由の1つが効果的な販促施策を講じられていないことだ。


近年は加盟店からアイデアを募り、ご当地色を打ち出したキャンペーンを積極的に展開してきた(記者撮影)

競合の日本マクドナルドは、ここ2年ほど、話題の拡散を狙ってツイッターを中心とした宣伝にシフトしている。昨夏に仕掛けたキャンペーンは「マック」と「マクド」の2つの愛称を懸け、東京・大阪それぞれをイメージしたバーガーどちらを支持するかをツイッター上で競うというものだった。キャンペーンに参加すると商品のクーポンが届くという仕組みで客数増につなげた。

一方、モスバーガーはテレビCMを打ったりしているが、ツイッターなどSNSを通じた商品訴求が不十分だ。同社は国産野菜の使用や、健康を意識した商品開発で知られるほか、ここ数年はご当地色を打ち出したメニューを強化している。だが、モスフードサービスの中村栄輔社長は昨年11月の中間決算説明会で「自分たちの強みをもっとアピールしていく必要がある」と販促の弱さを認めている。

さらに、過去5年の間は、2013年10月と2015年5月に食材価格などの高騰を理由に、商品の値上げに踏み切っている。特に2015年の値上げでは全商品の約9割を対象に10円〜70円引き上げ、看板商品の「モスバーガー」は340円から370円に値上げした。度重なる値上げによって客離れを招いた面もある。

いちよし経済研究所の鮫島誠一郎・主席研究員は「マクドナルドは400円近い高単価のハンバーガーも扱う一方、100円バーガーやバリューランチ(平日昼のランチセット割引)など割安な商品をうまくアピールしている。モスバーガーはこうした訴求ができていない」と指摘する。

加盟店オーナーが減少

マクドナルドが異物混入問題で不振にあえいだ2015年度は既存店売上高が前期比7.3%増と高水準だったが、このときは値上げによる客単価上昇の効果が大きく、客数に限って見ると前期比2.8%減だった。値上げが一巡したはずの翌2016年度も既存店客数は2.3%減とマイナスが続いた。


モスフードサービスの櫻田厚会長は、社長時代に経営意欲が乏しいオーナーの契約打ち切りを断行した(撮影:梅谷秀司)

こうした既存店における客数減少が、店舗網の拡大にも影響している。ピーク時の2000年度には1500店を超えた国内店舗数だが、それ以降はじりじりと減少し、直近の2017年12月末時点では1353店にとどまる。

店舗数が漸減する背景にあるのが、加盟店オーナー数の減少だ。モスバーガーは、直営が2割程度で、約8割はフランチャイズ(FC)契約をした加盟店オーナーが運営している。オーナー数は1997年の693名が最多。

当時の櫻田厚社長(現会長)が、初期の頃にFC契約をして惰性で経営しているオーナーに対し「なんとなく経営をしているのでは困りますよ」と話し、契約打ち切りを断行した。近年はオーナーの高齢化(平均年齢59歳)という問題も加わり、足元ではオーナー数が440名となっている。

オーナーの高齢化と、それに伴う新たな担い手の確保という課題に対応するため、本部は後継者育成に着手。2014年からは財務知識や事業計画策定を学ぶ次世代オーナー研修として内容をブラッシュアップし、加盟店向け独立支援を強化しているが、来2018年度も店舗数は横ばいを想定するなど、出店拡大に舵を切るには時間がかかりそうだ。

他業態も中途半端なまま

運営会社のモスフードサービスは、モスバーガーの一本足打法から脱却しようと、次の柱の育成を進めてきた。1999年には紅茶とワッフルの店「マザーリーフ」、旬菜料理の「あえん」などを立ち上げている。


2015年に東京・千駄ヶ谷で開業した「モスクラシック」。いまだ2号店を出せていない(写真:モスフードサービス)

ただ、マザーリーフは不採算店の閉鎖などで店舗数を減らしているほか、食材にこだわった「あえん」もブランド価値の向上を狙った業態で、店舗数の急速な拡大は望めない。

ハンバーガー業態でも2015年にグルメバーガーとお酒をテーマにした高級業態「モスクラシック」を東京・千駄ヶ谷で開業。FCも含めて多店舗化を狙っているが、求める立地が見つからないとして現在まで2号店を出せていない。いずれの業態も中途半端な状況が続いている。

客数と店舗数の減少という、外食チェーンにとっては苦しいトレンドから抜け出せないモスバーガー。復活への道筋をどう描くのか。マクドナルドをはじめとした競合が攻勢を強める中、かつての勢いを取り戻すのは容易ではない。

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