2018年6月10日日曜日

走行中の車両で凶行 乗客パニックに

 新幹線車内は、突然の凶行に逃げ惑う乗客でパニックになった。神奈川県内を走行中の東海道新幹線車内で9日夜に発生した殺傷事件。乗り合わせた男性が発生直後の状況を説明した。【片平知宏、澤晴夫】

 「突然、後ろの車両から大勢の乗客が走ってなだれ込んできた。車内はパニックになった」。旅行の帰りに事件のあった東海道新幹線「のぞみ265号」の9号車に乗っていたという兵庫県の男性(44)は、事件直後の車内の様子についてこう振り返った。「最初は、芸能人のイベントでもしているのかと思ったが、みんな緊張し、泣いている人もいたので大変なことが起きたと思った」と説明した。

 車内で緊急ブザーが鳴ったのは午後9時47分ごろ。その後、新幹線は小田原駅で緊急停車。車内アナウンスで警察が容疑者の男を確保したことが伝えられたという。男性は「被害者とみられる2人の方がブルーシートに覆われて車外に運ばれていった。乗客が落ち着くまでかなりの時間がかかった」と話した。

 また、2号車に乗っていたという自営業の男性(44)は「12号車の乗客とみられる人たちが2号車まで流れ込んで来て、『どうしたのか』と尋ねると、『人が刺された』と答えた」と話した。

 一方、小田原駅にいた男性によると、容疑者とみられる男は午後10時過ぎ、警察官に連れられ駅を出ていった。続いて、担架に乗せられた被害者とみられる3人が運ばれていったという。この男性は「男は手錠をされ、大勢の警察官に囲まれて抵抗する様子もなく連行されていった。メガネをかけ、茶色いズボンには血がべっとり付いていた」と話した。

危険物対策に限界

 2015年6月に走行中の東海道新幹線車内で起きた焼身自殺を機に、鉄道各社では車内防犯カメラの設置など、安全対策を進めている。だが、利用者の数が多いことから、手荷物検査など根本的な危険物の持ち込み対策に乗り出せないのが実情だ。

 15年の焼身自殺は、新幹線で初の列車火災事故と認定された。鉄道各社は16年4月、ガソリンなどの可燃性液体の持ち込みを禁止。鉄道営業法に基づき、不審な乗客には手荷物検査を実施、ガソリンなどが見つかれば下車させることにした。【花牟礼紀仁】

1月に自宅出る 小島容疑者

 愛知県岡崎市の小島一朗容疑者(22)の祖母によると、小島容疑者は市内の病院に一時入院し、「自由に生きたい。それが許されないなら死にたい」などと話していた。今年1月に「旅に出る」と言って自宅を出ていたという。【井口慎太郎】

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