東海道新幹線の車内で男女3人が切りつけられて死傷した事件で、殺人容疑で送検された無職、小島一朗容疑者(22)は1月まで暮らしていた愛知県岡崎市の伯父(57)方に、自殺願望や自身の在り方の悩みを記したメモを残していた。周囲には「自分は価値のない人間。自由に生きたい。それが許されないのなら死にたい」と話していたという。
伯父らによると、小島容疑者は昨年2~4月ごろ、大学ノートや紙切れに自身の思いなどを記した。紙切れに「人生においてやり残したこと 冬の雪山での自殺」とあり、大学ノートには「私は暴力がいけないことだというのは分かっている。しかし私は自分自身の正義の方を優先したい」と書いていた。
同じページに「私は自分が正しいとは思わない。新しい自己、もしくは欠けているものをとりもどす」との記述もあった。また、母親に対して「いつか立派になって恩返しします」と記していた。
一方、小島容疑者が昨年11~12月に勤務した障害者就労支援事業所の代表の男性(32)によると、小島容疑者は長野県の諏訪湖周辺で野宿生活を送ったことがあった。男性に「ご飯を食べなかった瀕死(ひんし)の状態はスリルがあって気持ちが良かった。生きるか死ぬかの瀬戸際の部分がいい」と話していたという。
小島容疑者は両親の元を離れ、愛知県内の生活困窮者の支援施設で暮らしながら、定時制高校に通った。卒業後は機械修理会社に就職したものの、人間関係を理由に退職した。2016年4月ごろから同県岡崎市の伯父方で暮らしたが引きこもりがちで、今年1月、行方を告げずに家を出た。
小島容疑者の母親は11日、報道各社に「被害にあわれた方々に心から深くおわび申し上げます」とするコメントを寄せた。【井口慎太郎、高井瞳、竹田直人】
被害男性上司「温厚で明るい」 研修で横浜に
亡くなった梅田耕太郎さん(38)が勤めていた化学メーカー「BASFジャパン」(東京都港区)では11日、上司の山本勇事業部長(48)が報道陣の取材に応じ、時折声を詰まらせながら「非常に悲しいし無念。こんなことはあってはならない」と語った。
梅田さんはプラスチックの原料を取り扱う事業部で新規用途開発と営業マネジャーを担当。取引先からも、明るく前向きで頭も切れると評判だったという。職場は同社の大阪オフィス(大阪市)だが、月に3、4回は東京や横浜へ出張しており、事件直前の7~8日も横浜オフィスで行われた研修に参加していた。その帰路で被害に遭った。
山本部長は「研修で『また来週』と話したが、いつも通りの温厚で明るい彼だった。いまだに信じられない」と話し、涙をぬぐった。
同社の石田博基社長も11日、「痛恨の極みで強い憤りを感じる。被害女性を助けようとしたのは大変勇敢な行動で、会社としても誇りに思う」などとコメントした。【山田麻未】
手荷物検査は「導入難しい」 JR東海
JR東海は事件翌日の10日、新幹線などの車内や駅の巡回を強化し、不審者を見つけたら速やかに連絡するよう職員に通知した。2020年東京五輪・パラリンピックに向け新幹線の安全確保は大きな課題の一つだが、事件防止の根本的な対策は見いだせていない。
同社は、15年6月に1人が巻き添えで犠牲になった車内焼身自殺を受け、東海道新幹線の客室内やデッキへの防犯カメラ設置を始めた。主力のN700A車両には全て取り付けており、常時録画している。
車内での事件防止の有効手段は手荷物検査だが、同社は「利便性を考えると導入は難しい」と消極的だ。担当者は「東海道新幹線は1日40万人以上の乗客がおり、手荷物検査を行えば滞留して運行に影響する。検査スペースの確保も難しい」と話す。【黒尾透】
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