2017年9月21日木曜日

コラム:FRBの資産縮小、財政運営に波乱起こす恐れ

[ワシントン 20日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米連邦準備理事会(FRB)が未踏の領域に突入しつつある。4兆5000億ドルまで膨らんだ保有資産の縮小を10月から始める。議会では再び予算手当てや債務上限を巡る対立が起ころうとしているだけに、タイミングとしては危険を伴う。保有資産縮小が、昨年全体で920億ドル近くに上ったFRBから財務省への国庫納付金を減らすことも、財政への圧迫となる。

FRBは20日までの連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り、2008年の金融危機に対応して積み上げてきたバランスシートの縮小開始時期を正式に定めた。6月に打ち出した計画に従ったものだ。米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の償還金を再投資せず、最初の3カ月で最大300億ドル相当の資産を圧縮する。縮小規模が計画通り引き上げられれば、最終的には四半期当たりで1500億ドルの圧縮が可能になる。

FRBは市場の混乱を想定しているようには見受けられないが、15日に開かれた「影のFOMC」では、1人のエコノミストが保有資産縮小が究極的には利上げに等しいと主張した。

さらに折悪しく、議会では財政問題でまた対立が生じようとしている。今月に入って議会は、3カ月間の暫定予算と債務上限引き上げに合意。この期限が12月8日に訪れる。それまでに新たな合意が成立しなければ、政府機関は一部閉鎖され、米国のデフォルト(債務不履行)へのカウントダウンが再び始まってもおかしくない。

一方で米国の財政赤字は拡大を続け、議会予算局(CBO)によると、今年は6930億ドルと昨年比18%増加する見通しだ。そしてFRBの保有資産縮小は事態を悪化させる恐れがある。過去数年間のFRBが国庫に納めた金額は年間で900億ドル超。だが保有資産が減れば金利収入も当然少なくなる。金融危機以前のFRBの資産は1兆ドル未満にとどまり、08年の国庫納付金はおよそ320億ドル程度だった。

議会は今年、ハリケーン「ハービー」関連で既に150億ドルの追加予算計上を迫られた。その後の「イルマ」の被害に対する復旧・復興でさらに予算は必要になる。それでもFRBは資産縮小を宣言したことで、財政運営に一層の波風を立てる可能性がある。

●背景となるニュース

*FRBは20日、4兆5000億ドルまで膨らんだ保有資産の縮小を10月から始めると発表した。2008年の金融危機以前の保有資産は1兆ドル未満だった。FRBが6月に提示した計画に基づくと、米国債とMBSなどの償還金は今後再投資されない。

*当初の縮小規模の上限は毎月60億ドル、最終的には同300億ドルペースとなる。エージェンシー債とMBSは第1弾の縮小規模が毎月40億ドルで、段階的に同200億ドルまで引き上げる。

*フェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジは1─1.25%に据え置かれた。

*金融政策を監視するエコノミストの自主的団体「影のFOMC」は15日に秋季会合を開き、ボストン大学のピーター・アイルランド氏は、保有資産縮小の効果が究極的にはFRBによる市場での債券売却に等しく、これは本来は政策金利押し上げを企図する場合に実行されるものだとの見方を示した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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