金融庁は1日、過剰な貸し付けが問題になっている銀行カードローンについて、メガバンクや地方銀行などに9月から立ち入り検査をすると発表した。融資審査などの実態を調べ、悪質なら行政処分もする。生活資金などに困る人々らが高金利であっても背に腹はかえられずカードローンを使うケースも多いが、近年の融資額の伸びが異例に大きいことから調査が必要と判断した。貸金業者に適用する貸し出し上限を銀行にも導入するかも焦点になる。
麻生太郎金融相が1日の記者会見で「銀行カードローンの適正化を推進したい。業務運営の実態を把握したい」と述べ立ち入り検査に入ると表明した。金融庁が民間への立ち入り検査を事前に公表するのは異例。同庁幹部は「国会などでも多く取り上げられた。一度徹底して調べるべきだと判断した」と説明する。
検査は9月から。対象は公表していないがメガバンクや地方銀行のほか、ローンの損失リスクを肩代わりしている貸金業などとみられる。利用者向けの専用ホットラインも開設し、詳しい実態把握に努める。
検査の内容は「過度な広告宣伝がないか」「融資獲得を行員らの評価項目にしているか」「過剰融資を防ぐ審査体制を敷いているか」など。金融庁は「利用者保護を浸透させるのが目標だ」(銀行第一課)とし、問題があれば業務改善命令を出して是正を促す。
銀行カードローンの残高は2016年度末で約5兆6000億円と5年間で7割増えた。銀行にとってはマイナス金利下でも10%超の金利収入が見込める魅力的な市場だ。貸金業者には貸し出し上限に「年収の3分の1まで」という総量規制が適用されるが、銀行は対象外だ。銀行が高めの金利を稼げる同ローンを積極的に売り込み、貸金業者から借りられない利用者らのニーズとかみ合ったことで融資が急拡大した可能性が高い。
金融庁の調査によると、銀行カードローン利用者のうち3年以内に貸金業者からもお金を借りた経験のある人の割合は63.7%に上る。このうち18%は貸金業者からの借入残高合計が年収の3分の1を超える。
カードローンを利用する理由も様々で、多くの場合は事業や生活に不可欠の資金であることも事実だ。一方で日本弁護士連合会は返済能力を上回る貸し付けが個人の多重債務の温床になりかねないとみて、審査体制の見直しを当局に求めていた。
全国銀行協会は今年3月、広告宣伝の抑制や返済能力のチェック体制強化などの方針を公表した。メガバンク幹部は「来る者は拒まずの姿勢は変えざるを得ない」という。金融庁も当初は「自主的な取り組みを見守る」(幹部)方針だったが、6月末のローン残高が前年同月比8.6%増えるなど歯止めがかからず、立ち入り検査に踏み切る。
検査期間は「検査次第で未定」(金融庁)だが、銀行にも貸金業者と同じ規制を敷くように銀行法を改正するかどうかが焦点。金融相は「そこまで詰まっている段階ではない」と慎重な見方を示すが、適切な審査や返済能力に応じた融資設定をしないといった事例が多数見つかるなど構造的な問題を認めた場合は法改正も視野にいれる。
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