もはや軽自動車の枠に収まりきらない高機能を携えるN-BOX
6年前に発売されたN-BOXは、過去4度の軽自動車販売首位となり、累計で112万台を突破している人気の軽自動車だ。そのN-BOXが二代目にモデルチェンジを行った。そのN-BOXは、50年前に発売されたN360と共通点が見られると感じた。
「すべての人に生活の可能性が広がる喜びを提供したい」という思いを原点に開発を進められたN-BOXだが、もともとは1967年に販売されたホンダ初の本格的量産軽乗用車N360からNの名を冠して作られたものだ。発表当時N360は、軽自動車最大の室内と居住性、上級ミニカーを凌駕する高性能と乗りやすさ、積極安全機構の採用が特徴であった。価格は31.3万円と、他社が37万円ほどであったのをグンと下げての販売だった。
本田宗一郎は当時「(前略)我々の商品は、1億の日本人だけを相手にして作っているものではない。皆さんの頭脳、皆さんの腕によってつくられた商品は日本の人達にこよなく愛されるのはもちろん、世界30億の人達にも、もっともっとより愛されなければならない。(中略)国際的にも立派に通用し、それでも工場が儲かり、経営が成り立っていくという値段を私はほしいと思う。Nの価格はまさにそれであって、それで成り立つような企業でなければ本物とはいえない(後略)」と1967年の社報で述べており、Nシリーズの輸出の必要性を説いていた。
国内の軽乗用車の市場規模は、N360発売以前は月販1万台を切っていたが、発売された3月以降は1万6000から1万7000台となり、5月には1万8000台を超えたのである。
N360の5月度軽4輪乗用車届出実績が、5570台を記録し、業界のトップとなった。また、発売3カ月後の6月6日には総予約累計が2万2500台を記録し、爆発的な人気を巻き起こした。加えてLN360・TN360も共に、発売後3カ月には機種カテゴリー別でトップとなり、以降、Nシリーズとして発売26カ月後の1969年4月には、国内届出実績50万台を記録した。
Nシリーズは軽自動車業界を変えてきた存在だと言っても過言ではない。
今回の目玉は、80kgの軽量化とホンダと先進安全装備システム、ホンダセンシングを軽自動車として初めて全タイプに標準装備としていることだ。「このN-BOXを皮切りに今後発売するすべての新型モデルに対して今後も標準装備の動きを進めていく」と、ホンダの寺谷執行役員 日本本部長は述べた。
N-BOXシリーズは累計販売台数約112万台を突破しているが、8月30日までで既に受注台数は2万5000台を超えていて、歴代2位の記録だという。
第二世代Nシリーズの考え方としては、日本の毎日を乗る人の生き方を楽しく豊かにするということだ。とくにノーマルのN-BOXの方では、子育て世代のママ達に照準をあて、家族が安心して安全に使えるようなクルマを目指している。
室内空間は20mmから55mmまで様々な部分で拡大しており、よりゆとりのあるパッケージだ。新設計の樹脂のセンタータンクで70mm薄型化を図るなど、細部にわたって室内空間を広げる努力が注がれている。そのゆったりした室内空間をさらに便利に使えるのが、スーパースライドシートを使ったシートアレンジのだ多彩さである。後部座席の子供の世話をしたり、社内を自由に移動できたりする工夫がなされている。エクステリアデザインに関してはLEDのヘッドランプを標準装備とし、好評だった先代を踏まえ、一目でN-BOXとわかる骨格を備えている。
またエヌボックスカスタムでは、ライトのデザインが特徴的で、セレブリティスタイルというキャッチコピーで、こだわりを持った人に向けてのカスタム仕様となっている。
N-BOXとN-BOX カスタムではエクステリアのカラーのトーンが全く違い、キャラクターの違いが明確に分けられているのも、ユーザーからすれば迷いが生まれず、良いだろう。
クルーズ時も加速時も、現行のN-BOXや他社のスーパーハイトクラスに比べて、静粛性をあげている。また新設計のダンパーによりふらつきを抑え、安定した走りをができているのだ。
注目はホンダセンシングが標準装備され、特にニュースなどでよく報じられる事故を防止する、後方誤発進抑制機能が初採用となっていることだ。
サブフレーム脱落構造の採用、i-SRSエアバッグシステム内圧保持エアバッグ、そして汎用型ISOFIX I-SIZE対応のチャイルドシートなど、安全面において軽自動車初の採用となっていて、普通車並みの安全性が確保されている。もはや、軽自動車の枠を超えている存在かもしれない。
エンジンはi-VTECのDOHCで、ロングストローク化に吸気側のVTECを採用している。燃費はリッター27.0キロと低燃費であるが、これには2系統吐出オイルポンプの採用や、油圧の低減により伝達効率が向上した新設計のトランスミッションによる功績も大きい。
加速性能はアクセルの開度に準じて行われるというリニアリティを重視した設計だ
今回のN-BOXでは、最大80kgの軽量化を行っており、エンジンやボディによる軽量化は、あわせて150kgにまで及ぶ。ここに性能や装備の充実、燃費向上などによりプラス70kgとなったかたちだ。高効率ハイテン骨格、新しいプラットフォーム、シャシー部品の軽量化のほか、新しい機械を導入し、シーム溶接と高粘度接着剤併用接合を用いている。
そして、ルーフサイドでは、ヨーロッパ車で使われるような溶接にレーザーブレーズを採用し、樹脂製のルーフを廃止している。広報の方によれば「コストはかかってしまいますが、上質感を高めるために工夫をしています」とのことであった。とくにN-BOXでは2トーンも選べるので、その際には、このレーザーブレーズがひときわ役立つはずである。
興味深いのは、「軽自動車最大の室内と居住性、上級ミニカーを凌駕する高性能と乗りやすさ、積極安全機構の採用」、といったN360の特徴が、今回のN-BOXの改良でも引き続き踏襲されていることだ。50年を経てもなお、ホンダの軽自動車開発にかけるスピリッツの根幹は変わっていないと感じた。今後もN-BOXの売れ行きは好調であり続けるだろう。
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