2017年9月21日木曜日

FRB、資産縮小の開始決定 12月の追加利上げ示唆

 【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、2008年の金融危機後の量的緩和政策を完全に終結し、大幅に膨らんだ保有資産の縮小を始めると決めた。08年~14年に購入した米国債などの保有量を、10月から段階的に減らす。米景気は拡大局面が9年目に突入し、金融引き締めは15年末の利上げ開始に次ぐ新たな段階に入る。

 20日のFOMCでは6月に続く利上げを見送り、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は年1.00~1.25%のまま据え置いた。ただ、同時に公表した金融政策見通しでは、会合参加者の多くが年内1回の追加利上げを予想。市場では12月の会合で再び利上げに踏み切るとの観測が強まりそうだ。

 FRBは08年から14年10月までの量的緩和で、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を大量に買い入れ、保有する資産量が9千億ドルから4.5兆ドルまで膨らんだ。14年の量的緩和終了後も資産量を維持し続けてきたが、10月からは満期を迎えた債券や証券への再投資を取りやめ、保有資産の圧縮を開始する。

 FRBが米国債やMBSの保有量を減らせば、金利に上昇圧力がかかる。15年12月に再開した利上げとともに、市場には二重の金融引き締めとなる。ただ、市場への影響を少なくするため、10月から3カ月の縮小幅は米国債が月60億ドル、MBSなどは40億ドルと小規模にとどめる。縮小幅は段階的に増やして1年後にはそれぞれ月300億ドル、月200億ドルとし、資産縮小の規模は最大で年6千億ドルとなる見込みだ。

 FOMC後に公表した政策金利見通しでは、参加者16人(金融政策の投票メンバーは9人)のうち、12人が年末までに追加利上げを予測していることを明らかにした。FOMCは従来から今年は3回の利上げを想定し、3月、6月と利上げに踏み切っている。ただ、市場では物価停滞やハリケーンの影響で、年内の追加利上げ見送りを予想する声があった。

 来年以降の政策見通しでは、会合参加者の中心シナリオが18年は3回、19年が2回の追加利上げとなった。ただ、利上げが打ち止めとなる「政策金利の天井」を2.75%と見込み、19年から20年にかけて利上げを停止する可能性も示唆した。FRBの分析では、経済の巡航速度である潜在成長率が1.8%に低下しており、中立的な金利水準そのものが下がっているためだ。

 FRBは利上げに続いて資産縮小に着手することで、政策運営を危機モードから平時体制に戻す。米景気は拡大局面が9年目に突入するなど底堅く、08年秋のリーマン・ショックから9年を経て、危機対応の完全脱却にたどり着いた。主要中央銀行では欧州中央銀行(ECB)も量的緩和の縮小を視野に入れ、英中銀も利上げ開始の可能性を示唆している。

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