2017年11月18日土曜日

【電子版】日産、不正隠すために不正重ねる 「型式指定」は維持見通し

組織ぐるみで隠蔽工作、ライン外し・完検バッジ貸与も

 日産自動車が発表した無資格検査の調査報告書は、組織ぐるみの隠蔽(いんぺい)工作を指摘した。不正の発覚を逃れるため、工場の現場監督者の指示で一時的に無資格者を完成検査ラインから外したり、有資格者の「完検バッジ」を付けさせたりしていた。不正を隠すために不正を重ねる法令順守意識の低さが露呈した。

 工場に対する本社の内部監査は毎年実施。2週間程度前に通知した上で、2~3人の担当者が1~2日間程度実施していた。国土交通省は2~3年に1回の定期監査を行っていた。

 調査報告書によると、追浜工場(神奈川県横須賀市)では、監査期間中、完成検査ラインに有資格者だけを配置するようシフト編成を変更。国交省の監査に対し、正規の完成検査員が無資格者には付きっきりで指導しているとうそをついていた例もあった。シフト変更や無資格者を会議室に待避させるといった隠蔽工作は、栃木工場(栃木県上三川町)やグループ企業の日産自動車九州(福岡県苅田町)などでもあった。

 追浜工場では、資格がなくても現場監督者による「見極め」に合格すれば、完成検査を行わせていた。検査終了時に正規の検査を装うため使い回していた有資格者の印鑑は「貸出帳簿」で組織的に管理。定期監査とは別に実施された国交省の立ち入り検査に対し、関係資料が改ざんされたり、削除されたりしたこともあった。

 報告書は、本社に完成検査の実態を知る者がいないため、「内部監査の実効性を減殺した」と指摘した。記者会見した西川広人社長は「監査での不正隠しは常態化していた。(法令順守を)重要事項と認識していれば、検知する機会はあったと思う」と話した。(時事)

国交省、型式指定「取り消し難しい」

 日産自動車が無資格検査問題の報告書を提出したことを受け、国土交通省は今後、内容を精査する。9~10月に実施した立ち入り検査の結果も踏まえ、刑事告発や行政処分も検討するが、大量生産に必要な「型式指定」は維持される見通しだ。

 国交省は無資格検査について、「型式指定制度の根幹を揺るがす」と繰り返し非難してきた。ただ、型式指定を取り消すには、製造する車が保安基準に適合しなかったり均一性がなかったりするか、不正な手段で指定を受けていた場合に限られる。日産はいずれにも該当しない可能性が高く、同省幹部は「取り消しは難しい」と明かす。

 日産の報告書は、国交省の立ち入り検査を受けた工場で、問題を隠すため不正確な説明や資料の修正、削除が行われていたと指摘。一部の工場で、足元を照らす補助灯を検査していなかった可能性も明らかにした。

 隠蔽(いんぺい)行為が「虚偽報告」と判断されれば、日産に2億円以下の罰金が科される可能性もあるが、故意に隠したことの証明がハードルになる。補助灯は「完成検査の未実施」として1台当たり最高30万円の過料の対象になり得るが、罰を科す必要性があるかを検討しなければならない。

 国交省は今後、完成検査が確実に行われるために、制度の改善点がないかも探る。(時事)

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