2017年11月5日日曜日

【試乗】ホンダ「ステップワゴンSPADA」 大幅改良でどう変わった?

ビッグマイナーチェンジされた「ステップワゴン」。写真は「SPADA HYBRID G・EX」(2017年10月11日、奥村純一撮影)。

ホンダ「ステップワゴン」が2017年9月、ビッグマイナーチェンジし発売されました。なかでも「SPADA」は外観を変え、ハイブリッドモデルも登場。どのように仕上がっているのでしょうか。

時代のニーズに対応、ハイブリッドモデルも追加

ホンダの主力ミドル級ミニバンである「ステップワゴン」が、登場からおよそ2年という短いスパンでビッグマイナーチェンジを行いました。

とはいえ、もともと走りの質感が高かった「ステップワゴン」だけに、現行モデルの改良というよりは「時代のニーズへの素早い対応」というのが今回のテーマ。

具体的に変更されたのは、「外観」と「パワートレイン」のふたつで、いまや「ステップワゴン」の販売の8割を占めるスタイリッシュモデル「SPADA(スパーダ)」のデザイン刷新と、ふたつのモーターがエンジンをアシストする「SPORT HYBRID i-MMD(スポーツ ハイブリッド アイ エムエムディ)」搭載グレードが新たに設定されました。

人気グレードである「SPADA」のテーマは「よりダイナミックに」。5ナンバーサイズにすっきり収まるデザインをよりワイドに見せることで、存在感を高めることが今回の目的だったようです。

そのために「ステップワゴン」の開発陣は、ヘッドライトのLED化によってエッジの効いたデザインを与え、グリルは幅広く厚みを持たせたデザインへと、フロントフェイス全体で“突進感”を表現したそうです。

外観も刷新された「SPADA」、よりコワモテに?

車体の全幅が1700mm以下(実際は1695mm)の「ステップワゴン」は、正面から見るとその存在感がボディ全体のボリュームよりも小さく感じられます。それゆえに取り回しがよいわけですが、その“突進感”というフレーズからうがった見方をすれば、高速道路などでノロノロと追い越し車線を塞ぐ前走車に、自車の接近を無言のもとに知らせることもできるのでしょう。

個人(山田弘樹:モータージャーナリスト)的には、デザインとは機能美が主軸であるべきで、そこに威圧的なニュアンスを持たせるのは嫌いですが、ここ数年のデザイン、特に高速走行が主体となるドイツ列強のクルマたちが、そこにトレンドを作ってしまったのは事実です。

ただそんな難しいことを論ぜずとも、女性ユーザーの間では「頼もしいデザインには、守られている感がある」という意見もあるようです。

また後述する「ステップワゴン」初採用となるハイブリッドモデルは、専用エンブレムのほかに、ドアハンドルがクロムメッキ処理され、リアコンビネーションランプ(こちらもフルLEDです)がクリア化されました。

そして「SPADA」の上級モデル「Cool Spirit(クール スピリット)」でも、フォグランプ内、ヘッドライト内のパーツやリアエンブレム/ランセンスガーニッシュがダーククロームメッキ化されました。

エンジンが主役の「スポーツハイブリッド」、実際どう働く?

前置きが長くなりましたが、マイナーチェンジを受け新しく追加された「ステップワゴン ハイブリッド」の乗り味をチェックしてみたいと思います。今回試したモデルは、「SPADA」の17インチホイールを装着した「Cool Spiritスピリット」1.5リッター VTECターボ(150ps)と、標準16インチの「HYBRID G・EX」です。ちなみに先進安全機能である「Honda SENSING」(ホンダ センシング)は、今回から全タイプに標準装備となっています。

ハイブリッドモデルに搭載されるのは、2リッターのiーVTECエンジン(145ps/175Nm)。これに発電用と駆動用それぞれのモーターふたつを内蔵するCVT(184ps/315Nm)を組み合わせることで、215ps/315Nmのシステム出力を発揮します。ちなみに気になる燃費はJC08モードで25.0km/L、国際的な走行規格であるWLTCモードでは20.0km/L。ガソリン車換算で3.5Lクラスの動力性能を持ちながらも、高い燃費性能を発揮するハイブリッドとホンダはアピールしていました。

実際これを走らせた印象は、ガソリンモデルよりも上質なアドバンテージを感じることができました。

ハイブリッド車は純粋な電気自動車ほどモーターパワーがなく、またホンダは特にエンジンが主役である「スポーツハイブリッド」という考え方だけに、「ステップワゴン」は電気自動車のようにスタートから加速まで一貫した静かな走行はできません。最初はEV走行で走らせても、アクセル開度が大きくなると、すぐにエンジンの活動が支配的になってしまいます。

しかしこのハイブリッドモデルにはエンジンルームからのノイズを遮断する吸音材が張り込まれ、フロントガラスの遮音性を高めるなど入念な防音処理が施されているため、たとえエンジンが回っていても車内は非常に静かです。また自然吸気の2リッターエンジンは回転上昇感がスムーズなため、そのサウンドに気持ちよささえ感じます。

課題はエンジン走行とモーター走行の切り替え

走り出してすぐに感じるのは、ホンダらしい軽快な乗り味です。1800kgを超える車重だけにスポーツカーのようには行きませんが、加速したいときに十分なトルクが素早く立ち上がり、街中では至って快適。また今回はワインディング路も走りましたが、アクセルペダルを深く踏み込んだ領域では2リッターのVTECが本領を発揮し、ミドルクラスのミニバンとしては十分な速さを引き出してくれます。駆動用モーターは黒子的にこれらの走りを手助けし、アクセル開度によって適切なトルクを維持し続けるCVTの連携も見事です。

また駐車場から出るときなど低速な領域はモーターのみで走らせることができ、スタートから無音で走りだすシームレス感を味わってしまうと、ハイブリッドの魅力がより一層高まります。

現状EV走行とエンジン始動の切り替わりが極端なことだけが残念ですが、これもバッテリー容量や発電モーターの能力が上がっていくことで改善できるはずです。また停止信号からのスタートや、道路へ合流するときの加速に必要な“一発のトルク”だけモーターが発揮できれば、街中ならばほとんどアクセルを大きく踏み込む状況もないため、より近未来的なEV感を持続して走ることができそうです。

「どう走らせたいか」で選べるラインナップに

身のこなしについては、ガソリンモデルの方がさらにキビキビとしています。車体のロールが深まって荷重変動が安定すれば、ハイブリッドモデルもガソリンモデルと同じくピタリと安定したコーナリングができるのですが、床下にリチウムイオンバッテリー(IPU)を搭載し、100kg重たくなる影響からか、ハンドルの切り始めで少しだけロールスピードが早く感じられます。

とはいえ、ハイブリッド化に応じてIPU(インテリジェントパワーユニット)を囲むようにクロスメンバーを配置し、フロントバルクヘッドやフロアフレームおよびサイドシルに断面補強を施し、フレームに溶接を増したというボディ自体に見劣りはなく、「Cool Spirit」と同じ17インチを履かせれば、これも解決できるのではないかと感じました。

結論づけるにハイブリッドモデルは、より上質な「ステップワゴン」に乗りたいユーザーに向けたモデルです。最も安価な1.5L VTECターボ「B」と比べて約85万円の差額は、燃費で取り返すのではなく上質感を得るためのものだと言えるでしょう。

逆にガソリンモデルは、走りの軽快さと手に入れやすい価格をもって、これを道具的に、ガシガシ使うのがとてもホンダらしく、ステキな乗り方だと思います。

もしハイブリッドモデルを買える予算があるなら、その間を取ってガソリンモデルで走りの「Cool Spirit」を選ぶのも手ですね。そう考えると、「ステップワゴン」のラインナップはとても充実したと感じます。

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