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連日、価格が上昇し、一時はついに200万円台も突破した仮想通貨の「ビットコイン」。米国では、デリバティブ(金融派生商品)の市場として知られるシカゴ・オプション取引所が12月11日8時(日本時間)にビットコイン先物取引を開始し、来年前期中にはナスダック証券取引所でも取引が開始される予定だ。“沸騰”するビットコイン投資にダイヤモンド・オンラインの記者も挑戦してみた。(ダイヤモンド・オンライン編集部 松野友美)
高騰するビットコイン
一攫千金を夢見て投資
「ビットコイン価格が急上昇している。どんなものだか、実際にやってみたらどうだ」
一旦、下がったビットコインの価格が再び上昇し始め、80万円を超えた11月6日、編集部のデスク(上司)から呼び出され、こう命じられた。
テレビコマーシャルを始め、ニュース番組や経済誌でも特集されるなど、「仮想通貨」や「ビットコイン」といった文字を目にする機会は増えていたから、名前だけは知っていた。しかし、その実態は分からないことだらけ。ただ、急騰していることだけは知っていた。
ビットコインとは、仮想通貨の一種で最もポピュラーなものだ。「仮想」なのでもちろん手に取ることはできない。売買は専用の取引所で行い、現金化する際は、業者を通して円やドルといったリアル通貨に換金しなければならない。
発行総量は2140年までに2100万ビットコインと決まっているため、価格は需要と供給の関係によって変動する。安い手数料で国際送金したり、世界中で両替せずに使えたりする“世界通貨”になるべく発展している途中だ。
最近は、そんなビットコインを安いときに買って、高値になったときに売って差額を儲ける投資法も注目を集めている。さらには、一定の保証金(証拠金)を差し入れれば、手元資金の最大5~25倍(業者によって異なる)の取引ができる「レバレッジ取引」も普及し始め、高リスク・高リターンの投資に乗り出す投資家も増えてきた。
ビットコイン取引業界の最大手、ビットフライヤーで公開されている価格遷移のグラフを見ると、2015年12月15日に11万7657円だった1ビットコイン(BTC)当たりの価格は、2年経過した今月15日には204万7688円にまで上昇し、なんと17倍以上になっている。価格は1日の間でも激しく上下するものの、長期的に見れば右肩上がりだ。
アカウント登録は簡単
ただ「買い時」が分からない
「これだけ上がってるんだから、もしかしたら一攫千金が狙えるかも…」
顔には出さなかったものの、密かにそんな期待を寄せていた記者は、ビットフライヤーでアカウントの開設準備にとりかかった。メールアドレスを登録し、パスワードなどを設定した上で、本人確認資料を提出。それも極めて簡単。運転免許証をスマートフォンで撮影し、登録画面にアップロードするだけだ。
2~3日後、自宅にハガキの簡易書留が届く。そこに書かれていたのは、シンプルに「本状のお受取をもって取引次確認のお手続きは完了です」とだけ。株取引を行う証券口座の開設よりも格段に簡単な印象だ。
続いて入金作業。パソコンからログインしてビットコインを購入するための銀行口座を登録し、11月21日にとりあえず1万円を入金して準備は完了した。ビットコインを購入する場は、買いたい人と売りたい人が取引をする「簡単取引所」と、業者が売買の相手になる「販売所」の2種類がある。最低取引単位は、販売所では0.00000001BTC、 取引所では0.001BTCから。この時のビットコインの価格は1BTC=90万円強だったので、取引所を使うと約900円から始められた。
ところがである。儲けようと意気込んだものの、なかなか売買に踏み込めなかった。スマートフォンにアプリをダウンロードして、朝や移動中など細めに価格の変動をチェックしていたものの、いつ買ったらいいのか、さっぱり分からないのだ。
というのも、株なら企業の業績や、経済環境などが判断材料になり、「相場よりも安い」と思ったら買えばいいし、高いと思ったら売ればいい。しかし、ビットコインはそうした基準が全くないから判断できない。
「少しでも下がったら買おう」と心に決めながら、優柔不断な性格が災いし、じりじりと上がるチャートを見るだけの日々が続く。そして11月26日、とうとう100万円を超えてしまう。
「まずい。入金していた分では買えなくなってしまった…」
そんな時に限って、デスクから「買ったか?どうなった?」と確認が入る。冷や汗をかきながら、「はい…また報告します」とお茶を濁してデスクの下を離れた。
ここで、「手数料」に関する記載を熟読した。手数料には、購入手数料と両替手数料があり、ビットフライヤーの場合、ネット銀行からの「クイック入金手数料」が1件当たり324円(税込)。「売買手数料」は、業者からビットコインを購入する「販売所」は無料、相対取引をする「取引所」では最少の10万円未満だと売買手数料は0.15%(BTC建て)となっていた。
例えば、1万円分のビットコインを取引所で買ったら、売買手数料の150円分がビットコインで差し引かれる。ちなみに「取引所」はビットコインの販売価格が相場より高めに設定されているため、よく計算した方がいい。さらに、買ったビットコインを円で出金する「出金手数料」は3万円分未満で税込540円(三井住友銀行は税込216円)だ。
こうした入金から出金までの手数料をざっと合計すると、最少でも1014円相当になる。つまり、手数料分を取り返そうとすれば、1BTCが110万1400円になるまで待たないといけない計算になる。
価格が上下する理由が分からない!
北朝鮮ミサイルにも反応なし
「せめて手数料分だけは取り返してトントンにしたい」と思った記者は、28日、思い切って0.1BTC分を購入しようと11万円を追加入金する。これで購入資金は12万円になった。
ところが、実際にビットコインを購入してみると、買えたのは0.09985BTC。手数料の0.00015BTCが引かれていた。
そこからというもの、日に何度もアプリで価格をチェック。思ったほどの乱高下はないが、上下する理由が分からないのでなぜかハラハラする。11月29日の午前3時には北朝鮮がミサイルを発射したが、目立った値動きはなく、時事ニュースによる影響はあまりないような印象を受けた。
「いつまで持っていたらいいですか…」
小心者なのでデスクに確認すると、「そんなに儲かってないだろう。もう少し様子を見てみろよ」との答え。デスクは元金融業界担当の記者なだけあって、マネーの動きに興味津々の様子だった。
実は、ビットコインはリアルの世界で買い物などにも使える。しかも、リアル通貨に両替せずにだ。価格推移を追うことにも疲れてきたので、全店でビットフライヤーと提携している家電量販店のビックカメラに足を運んだ。
商品を手にレジに並び、「ビットコインで支払いたい」と伝えると、端のレジに通された。店員が店舗のスマホ端末にQRコードを表示してくれたので、アプリのQRコードリーダーを立ち上げてこれを読み込んだ。「簡単じゃん」と思ったのもつかの間、まさかのエラー。店員と共に30分ほど悪戦苦闘するが解決策がみつからず、この日はあきらめて帰宅の途に就いた。
自宅でセキュリティ設定を確かめたところ、なんと「Eコマース設定」が無効になっていた。これでは買い物ができるはずがない。デフォルトは有効なのだが、記者は仮想通貨のトラブルを警戒していたため、アカウント登録直後に無効にしていたのを忘れていた。「私が原因だったのか…」と店員に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。ちなみに、認証に3回失敗すると無効になる仕様なので要注意。現時点では、アプリからでは設定変更できないので、買い物前にパソコンから設定しておきたい。
買い物できる場所も限定
主役は「投資」
万全の設定で翌日出直すと、無事に262円分の決済が完了した。決済時は業者のリアルタイムレート(非公開)を使って換算しているが、この時の円との換金レートは、販売所のビットコイン価格に近かった。
しかもビックカメラの10%ポイント還元ももらえ、現金との併用も可能だ。他にビットコインが使える店舗は、ビットフライヤーでは、丸井、HISや通販ショップなど約8000店あり、拡大中だ。
ただ、家電量販店の店員に利用客の状況について聞いてみると、「提携開始の初日は何人か使う人もいたが、今はほとんどいない。外国人観光客も使っていない」と言う。どうやらビットコイン利用の主役は決済ではなく、やはり投資のようだ。
購入から8日経った12月6日。ついに140万円台を突破したので、売却を決めた。最終的な結果は2万9098円のプラスで約24%の利益。途中に買い物もしたので、その分を加えると3万円程度の利益といえる。なおサラリーマンの場合、ビットコインの売却益が年間20万円以上になると確定申告が必要になるので注意したい。
記者のビットコインの取引記録
ビットフライヤーのビットコイン価格の変動チャートを元に編集部作成 |
1週間ちょっとでこれだけの利益が出たのは嬉しい半面、後日さらに高騰したため「もう少し我慢していれば…」と後悔の念も。ただ、価格を決めている要因が不透明で心配も大きかったので、悔し紛れだが手放してほっとした気持ちもあった。
また、アプリの使い方が分かりにくいといったサポート不足を感じたほか、再読み込みをしなければその瞬間の価格が表示されないため、“売り時”を逃す可能性もあるなど、安心して投資するための課題はまだまだ多い印象だった。
折しも、米国のシカゴ・オプション取引所がビットコインの先物取引を開始、来年前期中にはナスダック証券取引所でも取引が開始されることになっている。そういう意味では、今後、ビットコインはさらに“投資色”を強める可能性がある。投資はあくまで「自己責任」ではあるが、値動きの根拠が乏しい“ハイリスク・ハイリターン商品”であるため、今後、トラブルも増えるのではないかと感じた。
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
Read Again http://ascii.jp/elem/000/001/610/1610998/
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