新幹線のぞみの台車に亀裂が入ったまま運行を続けた問題で、JR西日本が27日、列車内で異変に気づいた社員と新幹線総合指令所とのやり取りを明らかにした。何度も異変に気づきながら、停止判断を互いに依存しての走行継続。経営トップは頭を下げたが、先端技術を集めた輸送システムに慢心はなかったか――。安全運行という原点に立ち返るよう求める声が強まる。
■認識ずれたまま 東海道・山陽新幹線ののぞみで異常が発生したのは11日午後。「安全をとって新大阪で床下(の台車点検)をやろうか」。JR西日本によると、岡山駅(岡山市)から新幹線に乗り込んだ車両保守担当社員が3時半ごろ、東京にある新幹線総合指令所に電話し、新大阪駅(大阪市)での点検を提案した。
しかし、新幹線は台車の点検をしないまま走行を継続。指令員はJR西の聞き取りに対し「隣に座る指令長からの問い合わせが重なり、(保守担当社員の提案は)聞こえていない」と説明したという。
保守担当と指令員のやり取りは、その後も断続的に続いた。「走行に支障があるのか」と繰り返し問う指令員に「判断できかねる」「異常がないとは言い切れない」と応じる保守担当。
聞き取りに対し、保守担当は「指令員がどこで点検するのかを調整してくれていると思っていた」と、指令員は「走行に支障がないとの認識は変わらなかった」と、それぞれ話し、浮かび上がったのは「現場と指令所が相互に依存する関係」(来島達夫社長)だった。
■床下から振動 異変は出発直後から起きていた。博多駅(福岡市)を出た直後の午後1時35分ごろ、車掌が13号車で甲高い音を聞いた。以降、新大阪駅に到着するまでの約2時間半にわたって異音、異臭、もやを確認したという。
聞き取りの結果、これまで明らかになっていなかった床下からの「ビリビリと伝わる振動」を保守担当が感じていたことも明らかに。異常の兆候は計30回に及び、このうち10回以上は後に台車で亀裂が見つかった13号車の近くで起きていた。
■「過度な信頼」 度重なる異変を把握しながら、運行停止の判断を下さなかったJR西。27日の記者会見で、吉江則彦副社長は「保安度の高い新幹線に過度な信頼があり、事故が起こりかねないという感度が鈍くなっていた」と頭を下げた。
一連の兆候について、工学院大の曽根悟特任教授(鉄道工学)は「シグナルはいくつもあり、遅くとも新大阪駅で床下を調べ、原因を特定すべきだった」と指摘。「鉄道事業者は、異常があれば、ためらわずに運行を止めるという安全の基本に立ち返る必要がある」と強調している。
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