米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長に指名され、金融決済システムの監督経験を持つジェローム・パウエル理事にとって、ビットコイン取引高の増加は懸案事項となるかもしれない。しかし、同氏は仮想通貨の革新に柔軟な姿勢を示している。マネーロンダリング(資金洗浄)の可能性についての懸念よりもずっと、資産クラスとして懲罰的な資本要件が適用されればビットコインの未来は打ち砕かれるかもしれない。
・価格は高騰、少ない取引高
新たなユーザーの流入でブロックチェーン(分散型デジタル台帳)の価値が高まっても、ビットコインの取引高はビザやマスターカードなどの決済ネットワークに比べてまだ少ない。ビットコインのハッキング、停電、不透明性、サイバー攻撃に対する脆弱(ぜいじゃく)性などは米金融当局が掲げる「信頼できる決済ネットワーク」とは矛盾する。ビットコインの1日の取引高は45万近くまで拡大したが、ネットワークの設計により取引高が制限される。これに対してビザの処理高は1秒当たり6万5000件で、6月30日までの1年間の取引額は10兆ドル(約1133兆円)相当を超えた。
ビットコインは決済ではビザに対抗できない
・パウエル次期FRB議長は仮想通貨に柔軟姿勢
次期FRB議長に指名されたパウエル氏が、米国のマネーサプライ管理機能を分散型ネットワークに引き渡すような極端な動きを支持することはないだろうが、銀行システムを通じて連邦預金保険公社(FDIC)が保証する預金を動かす新たな方法には、驚くほどオープンな姿勢を取るかもしれない。FRBでの最初の5年間、パウエル氏は即時決済システムの開発に取り組んできた。今後もこの優先度は変わらない。ビットコインは資産クラスとしてはまだ同氏の懸念対象ではないものの、この実体のない資産への銀行のエクスポージャーやクリアリングハウス(清算・決済機関)のリスクには、今後も目を光らせるだろう。
ビットコインの1日の取引高は相対的に少ない
・ビットコインのリスクウエートは1250%も
米金融当局は、ビットコインを含む仮想通貨のリスクウエートを懲罰的な1250%とする可能性がある。そうなれば、連邦準備制度の規制対象の銀行がビットコインを保有するには同価のドル資本が必要となる。ビットコインは効率的な小売り決済システムではないため、将来的な資産クラスとして、またデリバティブ(金融派生商品)取引に際しては銀行の関与が不可欠である。機関投資家がレバレッジにアクセスすることも、デリバティブ取引も、また価格発見の助けとなる無リスクの裁定取引も、銀行なくしては難しいだろう。
ビットコインのリターンは大きいが、銀行の利益となるか?
・ビットコインが決済システムの革新迫る
米金融当局がビットコインのような独自のデジタル通貨を発行することはないだろうが、これに代わる電子的システムを検討することはあり得る。可能性の一つとして、研究者の間で「フェドコイン」と呼ばれる通貨がある。連邦準備制度が管理する台帳を使用し、同価の米ドルと交換可能なデジタル通貨を発行するというものだ。「フェドコイン」の供給は一元管理される一方、取引は分散化されるだろう。米国の商業銀行のビジネスモデルが脅かされる可能性を考慮し、米金融当局は今のところ「フェドコイン」に関心を示していない。金融危機の際、商業銀行の預金は無リスクの中央銀行の準備金積み増しに有利に働く。
関連企業:JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はビットコインは詐欺だと発言しているが、JPモルガンとゴールドマン・サックス・グループはビットコイン先物に関心を示している。バンク・オブ・アメリカ(BofA)、ウェルズ・ファーゴ、USバンコープ、PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ、サントラスト・バンクス、BB&Tは、デジタル通貨の普及から影響を受ける可能性のある大手の預金受け入れ銀行である。
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