2017年12月23日土曜日

来年度予算案 切り込み不足は否めない 税収増頼み脱し改革に本腰を

 景気回復の実感が得られる力強い経済を実現し、同時に将来世代にしわ寄せが行かぬよう財政健全化を着実に進める。その両立が、かねて安倍晋三政権に求められてきた財政運営の姿である。

 来年度予算案の一般会計総額は6年連続で過去最大を更新し、97兆7千億円となった。高齢化に伴う社会保障費の膨張が歳出を押し上げる構図は変わらない。その中で「人づくり革命」や「生産性革命」関連に重点配分した。

 選択と集中により、予算を重点的に配分するのは当然だ。これにより、中長期的な成長力を高めようという狙いも悪くない。

 ≪目安達成に安堵できぬ≫

 これを税制や規制の改革と併せ、民需主導の成長にどうつなげるかである。

 問題は財政健全化だ。首相は衆院選で、2度延期した消費税率10%への引き上げを2019年10月に実施する意向を示した。

 併せて、消費税収の一部を国難と位置付ける少子化対策に使えるようにする。20年度に基礎的財政収支を黒字化する目標は達成できなくなるが、財政再建の旗は降ろさない。

 この約束を裏付ける歳出改革は不十分である。むしろ、消費税の使途変更などを機に財政規律が緩んだ印象が濃い。

 来年度は、政府の経済・財政再生計画に定められた3年間の集中改革期間の最終年にあたる。

 一般歳出の伸びを年平均5300億円に抑制するとした「目安」は達成した。だが、抜本的な制度改革はみられず、安堵(あんど)するわけにはいかない。

 景気回復で法人税や所得税などの税収が増えることを見込み、新規国債の発行額は8年連続で減らした。それでも歳入に占める国債の割合は34・5%である。借金に依存する体質は相変わらずだ。

 留意したいのは、来年度当初予算案と同時に編成した今年度補正予算案である。生産性革命などの経費が入ったほか、19年の発効を目指す日欧経済連携協定(EPA)対策費も計上している。

 財源の一部には1兆1千億円超の建設国債を充てた。追加歳出は2兆7千億円を超える。緊急性のある事業には、補正で応じるべきだ。しかし、当初予算は厳しく精査されるため、足りない分を補正で手当てする手法が常態化している。見逃すことはできない。

 経済悪化の際に財政を拡大するのは分かる。ただ足元の景気は改善傾向である。需要不足もほぼ解消し、逆に人手不足など供給面での制約が強まっている。デフレ脱却を確実にするため、もう一押しが要るとしても、やみくもに景気を刺激する状況ではない。

 ≪景気改善を好機とせよ≫

 この時期だからこそ、痛みを伴う歳出入改革に本腰を入れる好機だと捉えるべきなのに、政府与党からその発想はうかがいにくい。歴史的な低金利や税収増も助長しているだろうが、多くの施策で歳出圧力が高まったのが残念だ。

 主要項目では、歳出の3割以上を占める社会保障費が過去最大を更新した。政権は「全世代型の社会保障」への転換を唱えて子育て支援策などを充実させた。

 もちろん、高齢者向け施策を極端に縮小させるわけにはいかない。支払い能力に応じて負担を求め、必要な人に重点的にサービスを提供することを基本に歳出構造を見直す不断の改革が必要だ。

 公共事業では三大都市圏の環状道路整備に重点が置かれた。物流の効率化を通じて企業の生産性を高める効果に期待したい。

 20年の東京五輪に向けて民間投資の拡大も見込まれる。建設業の人員不足も勘案しつつ、人口減少社会に対応した適正規模のインフラ整備を進めるべきだ。

 来年、新たな財政再建目標を含めた計画が策定される際には、税収増ばかりに頼るのではなく、腰を据えた歳出入改革を打ち出してもらいたい。

 財政は経済が活力を維持するための基盤である。将来の暮らしへの不安は若年層ほど大きい。歳出の4分の1が過去の借金返済という現状では、本来使われるべき予算も十分に確保できない。

 北朝鮮の核・ミサイル開発などで安全保障環境が厳しさを増しており、防衛力整備に万全を期す必要がある。リーマン・ショックのような経済危機の再来もあり得る。危機に備えるためにも財政の立て直しは急務である。

Let's block ads! (Why?)

Read Again http://www.sankei.com/economy/news/171223/ecn1712230011-n1.html

0 件のコメント:

コメントを投稿