大手素材メーカー3社による品質データ不正問題の全容解明が2018年に持ち越しになった。三菱マテリアルは28日、最終的な報告が18年2月下旬以降になると発表。神戸製鋼所も報告の公表を延期しており、東レの調査にも時間がかかっている。グループ会社の多さや事業領域の広さに加え、未知の不祥事の発覚を恐れて慎重を期す姿勢も影響している。
「かなりの者が関与し、長期にわたって不正が行われていた由々しき事態だ」。28日、都内で開かれた記者会見。社外取締役らで構成する特別調査委員会の中間報告を受け、三菱マテの竹内章社長は深々と頭を下げた。
データを改ざんしていた子会社のうち、三菱伸銅は社内調査が終了。遅くとも01年から改ざんが日常的に行われ、品質保証部長らが主導する形で不正な製品の出荷を続けていた。組織ぐるみの不正を親会社の三菱マテは10月19日まで把握できなかったという。
不正製品の出荷先が多い三菱電線工業は、調査報告が18年2月末にずれ込む見通し。同社は3月に村田博昭社長(当時)がデータ改ざんを把握していたにもかかわらず、10月23日まで不正製品の出荷を続けていた。「ソフトランディング」での解決を目指し顧客への説明もしていなかった。調査委は「非常に深刻な内容を含んでおり徹底した再発防止策が盛り込まれるべき」と指摘した。
10月8日に神鋼が不正を公表後、素材大手で相次いだデータ改ざん問題。三菱マテと神鋼の共通点は、親会社から遠い子会社や非中核事業で不正が長期間隠蔽されていた点だ。両社は国内素材メーカーの中でも突出して事業規模が広い。顧客に近い事業部に大幅な権限委譲を進めたことで、経営側と不正を起こした部門に「壁」ができていた。この距離が調査に時間がかかっている原因にもなっている。
一方、3社で最後に不正を公表した東レは、外部の有識者委員会がすでに対象グループ会社の調査を終え「歴代の品質保証室長2人のみが実行者」と結論づけた。
3社には今のところ現場に近い責任者の処分を優先しているという共通点もある。三菱マテ、東レは問題を起こした子会社の社長をまず引責辞任させた。神鋼は担当副社長の責任を留保する一方で、3人の執行役員を事実上更迭し担当から外した。神鋼の川崎博也会長兼社長が「本社や経営陣は不正を知らなかった」と繰り返し強調するように、3社とも経営トップの進退については言及を避けている。
明暗が分かれているのは株価だ。最初に不正を公表した神鋼の株価は直前の終値から最大43%下げ、今も2割強安い水準で推移する。神鋼の1カ月半後に不正を公表した三菱マテは最大11%安、東レは同9%安で、足元では両社とも3%安まで回復している。だが、もちろん安心はできない。今後、顧客からの訴訟提起などで想定外の損失が発生する可能性があるからだ。
15年に発生した東洋ゴム工業の免震ゴム性能偽装問題では、子会社の該当事業の年間売上高はわずか7億円だった。経営の目が行き届かない部門で起きた不正で、社長や会長を含め5人の社内取締役がすべて引責辞任し、1100億円超の特別損失の計上を余儀なくされた。
問題の発生時に即座にトップが把握し、適切に対処できる体制をどう築くか。不正の全容解明が進む来年以降、3社のガバナンスのあり方が改めて問われる。(大西智也、鈴木泰介)
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