[東京 21日 ロイター] - 日銀は21日の金融政策決定会合で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする操作目標の維持を賛成8、反対1の賛成多数で決めた。政策維持に片岡剛士審議委員が引き続き反対した。
黒田東彦総裁は記者会見で、現行のイールドカーブの形状について「適切」と指摘し「変える必要があると思っていない」と述べた。「景気がいいからそろそろ金利を上げるという考えはない」とも明言。市場では日銀が長期金利目標を切り上げるとの観測が後退したと受け止められている。
<片岡委員が緩和強化提案>
会合の声明文では景気の総括が判断を「緩やかに拡大している」に維持。個人消費と設備投資の判断を上方修正する一方、公共投資の判断を引き下げた。
片岡委員が政策維持に反対票を投じるのは、今年7月に就任して以降、3回連続。同委員は反対理由として「消費税増税や米国景気後退などのリスク要因を考慮すると、2018年度中に物価安定の目標を達成することが望ましい」とし、政策対応として「10年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買い入れを行うことが適当」とした。
10月の前回会合では「イールドカーブにおける、より長期の金利を引き下げる」観点から、「15年物国債金利が0.2%未満で推移するよう、長期国債の買い入れを行うことが適当」としていた。
また、前回会合と同様に「オーバーシュート型コミットメント」の強化も主張。決定会合後に公表する声明文に「国内要因により、物価安定の目標の達成時期が後ずれする場合には、追加緩和手段を講じることが適当」と記述することを求めた。
<「政策見直し必要でない」と黒田総裁>
会見で黒田総裁は11月の講演で、過度の金利低下が金融引き締めの逆効果をもたらす「リバーサルレート」について触れたが、「リバーサルレートに言及したからといって、政策の見直しが必要ということではない」とし、現行のイールドカーブの形状が適切と強調した。
米国の長期金利が緩やかな低下傾向にあることについて、「米市場関係者の短期金利の見方を延長すれば、長期金利もそれほど上がらないというのが米市場の見方」と述べた。
<会見はハト派的な内容>
会見を受けて為替は円安に振れており、市場では「取り沙汰されている出口戦略への思惑は後退した。出口に関する言及どころか、実際はよりハト派的な内容だった。日本株に対して悪い材料ではない」(大和証券 シニアストラテジスト 石黒英之氏)との受け止めが聞かれた。
「11月にリバーサルレートに言及したことは、近い将来の金利誘導水準の引き上げの地ならしではなかったことが、ある程度はっきりした」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニアマーケットエコノミスト 六車治美氏)との解説も聞かれた。
竹本能文、伊藤純夫
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