
パナソニックとソニーの有機EL事業を統合したJOLED(ジェイオーレッド)は5日、有機ELパネルの出荷を始めたと発表した。低コストの「印刷方式」を世界で初めて採用し、まずは医療機器向けに出荷する。パナソニックが研究開発に着手して約10年。量産化への資金調達という難題はなお残るが、韓国勢が席巻する市場で巻き返せるか。
「事業としてやっていくためのスタート台に立てた。要素技術を1社で持っているのが強みの源泉になる」。5日に東京都内で記者会見した田窪米治最高技術責任者(CTO)は力を込めた。
最初の製品はまずソニーに納入し、医療機器向けディスプレーに搭載される予定。JOLEDの有機ELパネルは軽くて鮮やかな色彩を再現できるのが特徴で、放送機器や鉄道車両、航空機向けディスプレーなどの引き合いもあるという。田窪氏は「テレビ向けのパネルメーカーへの技術供与も検討する」と話す。
パナソニックとソニーの時代から苦節10年の研究開発を経て、ようやく事業化段階にこぎ着けたJOLED。だが喜んでばかりもいられない。次の量産化には高い壁が立ちはだかる。JOLEDには資金がない。当初はジャパンディスプレイ(JDI)の支援を得て量産投資に乗り出す計画だった。液晶パネルの不振にあえぐJDIの資金繰りの悪化で約束は実質的に撤回され、JOLEDは自ら量産投資の資金集めをしなければならなくなった。
今も資金確保のためにJOLED幹部は全国を飛び回り、総額1千億円の増資の引受先を募っている。田窪氏は「2018年3月末の出資完了を目指している」と話すが、当初「10月には出資企業を固めたい」(同社幹部)としていた期限はずるずると延びている。
JOLEDは自ら有機ELパネルを生産するだけでなく、外部のパネルメーカーに材料や製造設備とセットで生産技術を供与するビジネスも計画中。すでに中国のパネルメーカーなどから「引き合いがある」(田窪氏)という。このモデルを実現するためにも、まずは自前での量産技術の確立が不可欠だ。
電機大手のパネル事業を融合し、政府系ファンドの産業革新機構が生み出した兄弟ともいえるJDIとJOLED。JDIは日立製作所、東芝、ソニーの液晶パネル事業を統合して設立された。現時点では弟分のJOLEDに追い風が吹いているが、ともに外部に資金支援を求める厳しい状況は変わらない。
液晶から有機ELに一気に移行しつつある激変期を日本のパネル産業は生き抜けるのか。JOLED社長で、6月から経営不振のJDI会長も兼務することになった東入来信博氏は難しいかじ取りを迫られる。(細川幸太郎)
Read Again https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24289270V01C17A2TI1000/
0 件のコメント:
コメントを投稿