日銀は20~21日に開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決めた。黒田東彦総裁は会合後の記者会見で「景気がいいからそろそろ金利を上げるとの考えはない」と強調。あくまでも物価上昇2%目標を達するために今の政策にこだわる考えを示した。2017年は欧米の中央銀行が緩和縮小で足並みをそろえたが、動けない日銀は取り残された。
20~21日は17年最後の定例会合。今年は黒田総裁が13年春に就任して初めて、金融政策の変更が無い年になるのが濃厚だ。大きな政策変更が無いのは05年以来12年ぶり。足元で高度成長期の「いざなぎ景気」を超す息の長い景気回復が続き、株価も回復している。
世界を見渡せば米国に続いて欧州中央銀行(ECB)も17年秋に緩和縮小に着手した。日本経済が活気づけば長期金利に上向き圧力が出てくる。市場では「日銀が長期金利ゼロ%程度という誘導目標を引き上げるのではないか」との観測がじわりと広がっていた。
そんな見方を黒田総裁は21日にはっきり否定した。長期金利ゼロを掲げる長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について「あくまでも物価目標が達成されるかどうかとの関連で見ていく」と断言。目下の物価低迷では今の政策を続ける姿勢を強調した。
日本経済の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」はプラス幅を拡大中。今の政策を続ければ、需給の引き締まりや人々のマインドの変化で「物価が2%に向けて上昇率を高めていく」というのが日銀が描くシナリオ。黒田総裁は物価目標へのこだわりを21日も繰り返した。
5年目を迎えた黒田緩和のジレンマは、景気か物価かにとどまらない。「日本の金融仲介機能に現段階で問題が生じていることはない」。黒田総裁は21日、緩和の長期化による金融機関経営への悪影響は限られるとの見方を示した。
長期の緩和が金融システムに打撃を与える副作用に17年11月の講演で触れたのはほかでもない黒田総裁。「リバーサル・レート」と呼ばれる論理だ。緩和の副作用を持ち出すことで緩和縮小への布石を打ったのか、という臆測を呼んだ。しかし「学術的な分析を取り上げたからといって、何か(金融政策の)見直しが必要だとは全く思わない」(黒田総裁)と肩すかしを食らわせた。
金融緩和による市場のひずみへの懸念は目立ち始めている。日銀の上場投資信託(ETF)買い入れが株式市場をゆがめているとの声は代表例。黒田総裁は「行き過ぎが起こっているとか、バブルが起きているという状況ではない」と反論した。18年春の総裁任期切れに向けて、緩和の功罪を見つめ直す議論も必要になりそうだ。
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